2006年1月アーカイブ

 NHKハイビジョンでヒューマンロボットインターフェースの番組を見た。
立花隆(作家)さんの調査記録であり、ERATOの川人(学習動態脳プロジェクトリーダ)さんや筑波大学の山海教授(パワースーツ開発研究)が出席していた。
内容のレベルが高い番組だった。

 驚いたのは米国ではDARPAが兆円オーダの資金を兵隊ロボットの研究につぎ込んでいるということだった。プレディターに代表されるような兵隊ロボットの開発については知っていたが、ねずみの脳に浸襲型の電極を埋め込んでその行動を指令する驚くべき研究についは初めて知った。
 浸襲型電極を脳に埋め込んだねずみを迷路にいれ、人間が電波で右、左と移動方向を指令すると、そちらの方向へ進んでゆき、迷路を脱出できるのだ。カメラを取り付ければ、ねずみに戦場で斥候の役をやらせられるという。

写真:電極に繋がるコントローラを担いだ「ねずみ」の写真がそれである。NHKスペシャル補遺サイト(http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/sci/project/nhksp/)から引用させていただいた。

 動物虐待のそしりは免れないが、斥候で人間の兵隊が死ぬ可能性が高いことを考えればやむをえないと開発者は言っている。脳に電極を埋め込んでその行動を支配できるということは相当に脳の研究が進んでいることを物語っている。まさにサイボーグであり、それがこのような形にまで現実化していると思うと、恐ろしくもある。悪人が人間に適用したらどんな恐ろしいことが起こるか?
 やってよい研究なのか、技術アセスメントを早急にやるべきであろう。

 川人さんは自分は人間に装着した非浸襲型センサを使って外部の機械ロボットを制御するという方向で研究開発を進めると言っていた。非浸襲ならば外部の人間からは人間(生物)が制御されることは無い。人間が動作を考えることで脳波または筋電を発生させて、これを使って外部のロボットを制御することはできる。

 立花隆さんは日本の産業用ロボットが世界一だということと、エンターテインメント型ロボットへトヨタ、ホンダが入れ込んでいることを述べて、米国のやり方と比較していた。
 筆者は別の論文で、「現在二足歩行ができたから人に役に立つロボットができたと思うのは早計で、そのような知能ロボットで作業ができるにはまだまだ数十年は必要だ」と述べたが、ロボット先進国のロボット研究者もそれを数十年も待っていることはせず、別の道を突き進んでいることがわかった。つまり人間または生物の知能と、ロボット機械とを電気信号で結合(インターフェース)するサイボーグ化の方向だ。知的パターン認識、総合判断(人類はその原理をまだ解明していない)は生物に任せ、兵器機能は機械に任せるという、役割分担の方向だ。

 サイボーグロボット研究の過程を踏みつつ、純人工の知能アルゴリズムが理解されてゆくことはあると思うが、しかし、イラクで頻発している自爆テロをねずみや犬にやらせることを米軍が計画しているとしたら(そんなことはしないと思うが)、それこそ生命の軽視で、人類の滅亡につながる行為であるとして非難の声を上げねばなるまい。

 

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