2008年4月アーカイブ

(Urban Challenge現地レポートを参考にした)

 DARPAは無人走行できるロボットカーの開発を急ぐために競技会を開催して、広く民間開発者の参加を呼びかけてきた。
 第1回目(2004年)は砂漠の中の無人走行チャレンジで、完走車はゼロであった。第2回目(2005年10月8日)のチャレンジでは同じく砂漠の中の走行で5台が完走できた(優勝はスタンフォード大学)。この結果を受けて、今回(第3回、2007年11月3日)は市街地走行を想定した競技会が行われた。米軍の基地の中に市街地を想定した通路や交差点、駐車場などを作り数十台のロボット車と有人車とが一定の交通ルールのもとで一定の走行スケジュールを走行してトータルの走行時間を競うやり方だ。他の車に混じって交差点の通過や車線変更、車庫入れなどを行う。市街地と想定された地域の中央区域には家屋や建物もある。最も多いときで59台が同時に模擬市街地を走行した。この内ロボット車は11台(注1)。残りはプロのレーサが運転する車だ。なお、ロボット車の後ろには追跡車が1台づつ付いて、追跡しているロボット車が他の車に追突しそうになるときには緊急停止させる任務をになっている。各ロボット車は、6時間以内に3つのミッション遂行のために約60マイル(約97km)を走ることが要求された。今回は、6台が完走でき、前回2位だったCMU(カーネギーメロン大学)が1位になり、1位だったスタンフォード大学は2位であった。

注1:事前テストによって参加申し込み89台の内11台が競技に参加できた。

 第1回目から第2回目までが1年間であったのに対して、第2回目から第3回目までは2年間を要している。今回は、砂漠のレースと違って多くの障害物が動いており、技術的な困難さが大きかったのが原因と想像される。

 参加を許された11台中6台が97km(平均時速23km、最高時速40km/h?)を完走できたのは、第1回の市街地走行競技としては驚きに値することといえよう。コース走行はGPSとそれによるナビゲーションの手法が確立されているので困難は無いが、他車との干渉、道路交通法規の遵守などが難しい。例えば、完走した6台のうち5台が屋根に載せていた、障害物を検出するためのLIDAR(レンジファインダー)。音響機器のサブウーファーのメーカーであるベロダイン(Velodyne)社が、創業者の興味からグランド・チャレンジに出場するために開発したものだが、このような強力な新デバイスが開発され、他車との干渉検出などに貢献した。 ただ、第4回目の競技会が未定のところを見ると、砂漠の中の完走が実用に近い技術になっているのに比較して、市街地走行は完走したといえども実用には程遠い(実際の市街地走行を安全にするまでにはもっと多くの課題を解決しなければならない)ので、今後更に競技会を展開するのは時期尚早という判断があったのかもしれない。

 砂漠地帯の走行は実用レベル、市街地走行技術は研究レベルという判断が出ただけだとすれば少し物足りない結末だ。

 

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