力制御ロボットが何故工場で使われないか?

| コメント(0)

 アームが環境物体に接触する時の反力を制御できる力制御ロボットの研究はロボット研究の歴史の中で大きな分野を占めてきた。しかし、そのような研究にもかかわらず力制御ロボットが工場で実用化された例は殆ど無かったといってよい。最近ファナックから発売された「NC機械にワークをロードアンロードするシステム」は6軸力センサをツール端に装着しているので、日本で商品化された初めての力制御型アームの可能性はある。しかし、力サーボではなく、単なる力モニタを可能にした位置制御ロボットであるかもしれない。
 何故、力制御型ロボットが実用できていないのであろうか?
 原因を考察してみる。

 力制御ロボットアームに期待したい仕事には、今まではばり取り作業や磨き作業などがあった。しかし、力制御アームを使うと現状では力制御の動特性が低いので、多くの場合望みの品質が得られなかったり、できても作業速度が遅くて実用にならなかったりする。応答性が低くても作業を成功させるためには、個別の仕事にあわせてアームの動きを調整する必要が出てくる。例えば磨き量を一定にするために磨き工具の接触・離脱にあわせて接触力を調整するとか・・・。つまり、単に力制御すれば良いというのではなくて、少し知的な動作を組み込む必要が出てくる。この個別のプログラミングが難しくて、力制御が敬遠されていることがあると思う。

 ばり取り作業は力制御のロボットアームなどを使わなくても、多くの場合位置制御だけで実用化されている。磨き作業などでは対象への押し付け力の制御をロボットアーム制御ではなく、アーム先端につけた専用ツールでやる方法もある。この方が力精度、応答性が高く実現できる。

 力制御ロボットアームに期待したい他の仕事としては機械部品の組み立て作業がある。組み立てる部品同士の接触状態を制御して組み立てることが出来れば、人のように組立てることが出来るはずである。しかし、実際にはこの方法では前記の磨き作業の場合と同様の理由で機敏に組み立てることが出来なくなる。したがって現状では、産業用ロボットで機械を組み立てる場合には人間とは異なったやり方で力制御を使わずに実現されている。産業用ロボットは部品などを人よりもはるかに高精度に位置決めできるので、視覚や触覚、力覚が無くても、治具やツールを工夫すれば部品を正確に掴んだり、精度良く組み合わせたりできる。商品寿命が数年から10年ほどもある部品(例えば自動車のエヤコン)の組み立ての場合には、設備にお金がかけられるのでこのような方式で実現されている。

 まとめると、現状では力制御アームの出番が少ないということになる。
 個別の仕事ごとにアームの動き(場合によっては制御特性)を調整する必要があり、汎用性に欠ける。このプログラミングが難しくかつ面倒なために力制御が敬遠されていることがあると思う。将来力制御を有効に使うためには制御の一層の高速化と同時に、プログラミングが簡単に出来るような研究が必要であろう。

コメントする

このブログ記事について

このページは、essahoiが2007年1月15日 17:08に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「ファナックの知能ロボットの用途」です。

次のブログ記事は「力制御の高速化研究例」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。