関節トルクフィードバック方式のアームの制御方式は、先回述べた3本指汎用ハンドの制御方式と同じである。3本指汎用ハンドでは一つの作業対象物体に3本の指が協調して接触し、安定に把持をする。接触時の接触力やバネ特性(コンプライアンス)を制御しているのに、実験では把持動作の動的な安定性はすばらしいものであった。つまり、接触から把持までの作業時間が数10msecというように非常に短いにも関らず、十分に安定に動作してくれるのである。このことから、物体との接触作業を目的とする場合には、関節トルクフィードバック方式は大変有効であるという認識を持った。
現在、いわゆる力を制御するロボットアームはアームの手先に取り付けた力センサで反力を検地してフィードバックし、力やコンプライアンスを制御するのが主流であるが、接触作業の高速化や複数アームの協調作業に対しては、関節トルクフィードバック方式も大きな可能性を持っていると考えられる。剛体接触を伴う作業の制御安定性は関節トルクフィードバック方式がはるかに優れている(参照:"Development of a Fast Assembly Robot Arm with Joint Torque Sensory Feedback Control"、Proc. of the IEEE International Conference on Robotics and Automation 1995 ,pp.2230-2235)。もっと、開発研究を進めるべきではないのか?
また、関節トルクフィードバック方式は安全性の面からも有効である。関節トルクフィードバック方式では、アームのどの部分が人間に接触しても感知して停止するまたは回避することが可能である。手先センサ方式ではそうは行かない。また、最近、トヨタや日産がラインに導入しているダッシュボードユニット・ローディング用のバランシングアームのような仕事をさせることも可能はずである。
アーム関節トルクフィードバック方式は現在の産業用ロボットの構造には直ぐに応用することができず、構造の大幅な変更を余儀なくされる欠点はあるが、日本でも、もっと研究されてしかるべきだと思う。
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