2011年6月アーカイブ

 日本のロボット研究者は30-40年間、企業や国の研究費を使って研究してきた。その結果、産業用ロボットでは世界一の利用実績、介護ロボット技術でも世界で最も実用化に近づいていると思われる。
 そんな状況の中で福島第一原発の大事故が発生した。事故を収斂させるために多くの技術者が被ばくの危険性の中で作業している。作業ロボットがあればそのような危険を冒す必要はなかったのだ。これから事故を収斂させるためにまだ多くの危険作業が残っている。今からでも遅くはない。作業のできるロボットを開発してもらいたい。高放射線下で配管を接続したり、除染用フィルタを交換したり、・・・・などができる作業ロボットである。「無線操縦+自立作業」型でよいと思う。

 技術というのは必要性と使える場と予算があれば進む。人材については日本の場合十分にいるはずである。現実の問題を前にしての研究ならば、ロボット技術が急激に進歩するに違いない。ロボット技術にとって今はチャンスなのだ。現実の対象は技術に妥協を許さない。自分で現実性のない土俵を勝手に作り、その中でできたと喜んでいるような研究は許されないのだ。

 このロボット技術が開発されれば、それは原子力発電所だけでなく、広い分野でのメンテナンス作業、たとえば、橋梁の補修作業などにも使うことができる。米国では宇宙衛星基地での作業用に作業ロボットの研究をNASAやGMが共同してやっている。日本も負けてはいられない。国の研究機関、大学、企業が力を合わせて研究する具体的で挑戦的な対象が目の前にある。

 福島第1原発の事故は収斂にほど遠い状況にあるように思える。高レベル放射能の排出、原子炉の爆発の可能性はなくなっていない。緊張の続く毎日のため、東電は先のことなど考える余裕がないのだろう。納得のできる今後の収斂シナリオは発表されていない。冷却水からのセシウム除去システムがうまく稼働したとしても、また冷却システムがうまく作動したとしても、いったい何時まで冷却するつもりなのか?残っている燃料は膨大らしいから、この先100年くらい冷却をし続けるのだろうか?それは現実的ではない。

 京都大学の原子力関連の教授がテレビで話していた通り、結局はチェルノブイリと同じようにコンクリートの石棺を作って、100年くらい?放置するしかないのかもしれない。その際、原子炉の周りに石棺を作るための鉄骨からなる枠組みを作らねばならない。高レベルの放射線が飛び交う中で誰がその作業をやるのか?

 高齢の作業員を動員して決死隊を構成してやるしかないなどと言っているが、そんな残酷なことが許されるのか?やはり技術立国の日本らしく、遠隔操縦で組み立ててゆく建設機械を開発しなければならない。宇宙では米国がロボットを使って構造物を組み立てる研究を続けている。それが参考になるのではないか?
 日本には高さ600m以上のスカイツリーを作れる技術がある。建築技術者、ロボット技術者の出番である。日本の技術力をもってすれば必ずできると思う。国民も応援するだろう。


介護ロボット

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 昨日NHKクローズアップ現代で"高齢化先進国"の強みを生かせというテーマで放送があった。高齢者介護の問題が日本だけでなく、ヨーロッパでも特に中国でも大問題として浮上していることが分かった。日本の先進サービスや技術を輸入して介護の負担を軽減をしたい。
 日本ではパナソニック、セコム、大和ハウスなどがいままで長期にわたって開発を進めてきたが、なかなか広く使ってもらえる状況にはなっていない。介護施設で使おうとすると、施設側に専従員が必要で負担が大きいらしい。国からの支援も乏しい。そのような状況の中で北欧のデンマークがパナソニックに共同開発を申し入れてくれた。
 日本国内よりも世界に目を広げて共同開発や適用実験などを進めて、新しい輸出産業として走りだそうという意欲がメーカ側に見られた。
 人を傷つけない、人と共存しうる安全・安心なサーバントとしての介護ロボット技術は、新しく、困難な技術分野である。世界をリードできる可能性がある。

pana_sen1.jpg

 上の写真はパナソニックが開発した洗髪ロボットの指で、16の自由度を持ち、頭を柔らかく揉む。ものを柔らかくつかむロボットハンドの技術を発展させたものらしい。(Tech-on;2010/09/30 19:35から引用)

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