2016年2月アーカイブ

 ロボット技術を進化させるために、目標機能を設定して、性能の高さを競うというのは、第1回Amazon Picking Challenge で見たように有効な方法であり、来年には第2回が予想され、性能の大幅なアップが期待される。

 同様なRobotic競技会には、米国Darpa(米国防総省高等研究計画局)主催のGrand Challenge(→Urban Challenge、当Webの2008.4.28参照)が有名である。 無人走行自動車のUrban Challengeは2004年から行われ、数回の実施を経て、「無人走行自動車のためのハードウェアやソフトウェアの基本技術」の開発を終了した。現在は個々のメーカが市販自動車の実用化を目指してしのぎを削っている。


 また、2足歩行ロボットの開発を目標とするDarpa Robotic Challengeが2012~2015におこなわれ、世界各国の研究者がロボット開発に参加し、ロボットの完成度を高めてきた。現状ではまだまだ安定歩行、速度の面で未完成と思っていたが、最近、Google傘下のBoston Dynamics社が完成度の高い2足歩行のビデオを発表(日刊工業新聞、ニューススイッチ参照)し、驚いている。競技会で得られた知見を取り入れて再開発したものと思われ、Robotics競技会の有効性を思い知らせられた。

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 このような中、日本でも産業用ロボットの進化をメーカが単独で開発するのではなく、広く大学やベンチャーなどの研究能力を活用しようとする動きが始まっている。産業用ロボットの現状の能力は、すでに数十年前から変わっておらず、さらに進化が求められている。 先回のブログで紹介したAmazon Picking Challengeは、作業内容を明確にした作業実現コンテストであり、その過程で開発項目が明確になり、新しいソフトウェアやキーデバイスの開発が進むと期待できる。

 デンソーウェーブや川崎重工はロボットアームのサーボ部分に、ROS経由で、直接アクセスできるロボットアームを販売する予定とのことである(下写真)。研究者はROSの下で開発されているソフトウェアを自由に組み合わせたり、新しく追加したりして、ロボットの新しい能力を実現しやすくなる。

 日本もAmazonやDarpaのように、Challengeテーマを設定し、ロボット機能の開発をスピードアップさせる試みをやってはどうか?

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デンソーウェーブ製 双腕型Cobotta

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川崎重工業製 7軸ロボット

位置制御を主体とする従来型の産業用ロボットは、人が作業環境を整え、ロボットの軌跡を厳密に教えることで作業をすることができた(カメラによる位置補正を含める)。このようなやり方でも現実の電気機器や自動車部品などの組み付けラインの中で、世界でも数万台以上のロボットが仕事をしている。

 一方、人手でないとできない作業を含む生産ラインまたはセルの自動化がまだ残っている。そこでは作業員とロボットが協調して仕事をすることになる。この場合にはロボットの隣りで人が作業できるように、安全なロボット(万が一、人と接触しても人を傷つけない)が必要となる。

 このようなロボットはすでにいろいろ製品化されてきており、当ブログでも紹介してきた。しかし、安全なロボットアームのハードウェアは、ほぼ開発が終了したと思われるに対して、ロボットが機能を発揮する具体的なソフトウェアに関しては、開発はこれからという段階と思われる。

 ロボットのソフトウェアといっても、ロボットアームを動かしたり、視覚認識をするミドルウェアの開発研究は進んでおり、これらがOpen sourceで提供されるROS(Robot Operating System、Open Source Robotics Fundationが管理する)が有名である。 ライブラリは、移動、視覚認識、音声認識、通信、ツール類、その他も含めると、その数は数千にも達していると言われる。

 開発がこれからという意味は、従来のロボット(アーム、視覚、触覚など)を使ってする作業が比較的単純なものに限られているということである。

 例えば、AmazonがAmazon Picking Challengeで2015年から開始した、「棚から目的とする品物を選び、取り出して、箱に収める」などの仕事(下の写真参照)では、品物ごとに変わるPicking作業をセンサ情報を参照して自動生成している。ChallengeではROSの上などに適応的なソフトウェアを試作し作業能力を競っているが、最優秀賞を受賞したチームの場合でさえ、作業速度が極端に遅く、まったく実用にならないというのが現状である(ENGADGET,Amazon crowns winner of first warehouse robot challengeを参照)。

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 しかし、遅いとはいえ、不定形な重なり合った品物を視覚で認識して、一つ一つピッキングできており、ソフトウェア技術が少しづつ進歩していると想像される。

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