位置制御を主体とする従来型の産業用ロボットは、人が作業環境を整え、ロボットの軌跡を厳密に教えることで作業をすることができた(カメラによる位置補正を含める)。このようなやり方でも現実の電気機器や自動車部品などの組み付けラインの中で、世界でも数万台以上のロボットが仕事をしている。
一方、人手でないとできない作業を含む生産ラインまたはセルの自動化がまだ残っている。そこでは作業員とロボットが協調して仕事をすることになる。この場合にはロボットの隣りで人が作業できるように、安全なロボット(万が一、人と接触しても人を傷つけない)が必要となる。
このようなロボットはすでにいろいろ製品化されてきており、当ブログでも紹介してきた。しかし、安全なロボットアームのハードウェアは、ほぼ開発が終了したと思われるに対して、ロボットが機能を発揮する具体的なソフトウェアに関しては、開発はこれからという段階と思われる。
ロボットのソフトウェアといっても、ロボットアームを動かしたり、視覚認識をするミドルウェアの開発研究は進んでおり、これらがOpen sourceで提供されるROS(Robot Operating System、Open Source Robotics Fundationが管理する)が有名である。 ライブラリは、移動、視覚認識、音声認識、通信、ツール類、その他も含めると、その数は数千にも達していると言われる。
開発がこれからという意味は、従来のロボット(アーム、視覚、触覚など)を使ってする作業が比較的単純なものに限られているということである。
例えば、AmazonがAmazon Picking Challengeで2015年から開始した、「棚から目的とする品物を選び、取り出して、箱に収める」などの仕事(下の写真参照)では、品物ごとに変わるPicking作業をセンサ情報を参照して自動生成している。ChallengeではROSの上などに適応的なソフトウェアを試作し作業能力を競っているが、最優秀賞を受賞したチームの場合でさえ、作業速度が極端に遅く、まったく実用にならないというのが現状である(ENGADGET,Amazon crowns winner of first warehouse robot challengeを参照)。
しかし、遅いとはいえ、不定形な重なり合った品物を視覚で認識して、一つ一つピッキングできており、ソフトウェア技術が少しづつ進歩していると想像される。
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