久しぶりにアーサー・C・クラーク原作の映画「2001年宇宙の旅」を観た。約40年前の1968年にスタンリー・キューブリックと共同制作した作品であるが、コンピュータと人間の関係について本質的な問題を提起していて今でも新鮮な内容である。映画では、宇宙船を統合制御しているHAL9000というコンピュータが乗務員の命令を忠実に実行するシステムとして設計されたはずなのだが、いつの間にか意思のようなものを持ってしまったことから問題が発生する。ある時HAL9000はその判断ミスを乗務員に発見されてしまう。危険を感じた乗務員はHALを停止することを考えるがそれをHALにさとられてしまい、HALは乗務員を殺して自分を停止させないように画策する。しかし、乗務員は数人の仲間の命を犠牲にしたが、HALとの戦いに勝って、ついにHALを停止することに成功するという物語である。
話を現実に戻すと、現在、HAL9000とまでは行かないまでも、コンピュータに知能を持たせようという研究が盛んである。しかし、不完全な知能コンピュータが人間に大きな被害を与える可能性は多く、これからそのような被害が現実のものになってくるかもしれない。コンピュータの判断を鵜呑みにするのではなく、人間の健全な良識で評価することの重要性がますます高まってくる。この作品はその重要性を指摘している。
現実の例として日本が世界に誇る「地球シミュレータ」がある。地球の気象に関する数々の知見を与えてくれているすばらしい装置ではあるが、あくまでもコンピュータでありシミュレータである。現実の地球ではない。シミュレータはそのアルゴリズム、入力条件が変わると結果ががらりと変わってしまうものである。アルゴリズムや入力条件などが正しいかどうかは誰にもわからない。その結果をどう判断するかは、最後はやはり人間の良識であることを忘れてはならない。われわれも、「2001年宇宙の旅」の乗務員のようにコンピュータに用心深く賢くならねばならない。
地球シミュレータの写真
(NHKスペシャル 「気候大異変」 のサイトから引用)
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