ロボットの形態について(2)

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 「産業用ロボットがやる仕事は人間に近づくが、姿形は逆に遠ざかる」というファナック社長の見解について考察してみよう。よく考えると、この見解は矛盾があるような気がする。「やる仕事が人間に近づくならば、姿形も人間に似てくる」と考えるほうが無理がないと思う。仕事のやり方が人と違うならば、姿形も人とは異なるものになるというのが正しいのではないか?この例としては、電子部品挿入機(マウンター)がある。当初は人手でプリント版の穴にICの足をはめ込んでいたが、それを機械化したものであるが、人より何百倍も早くはめ込むことができるようになった電子部品挿入機の形は人の手とはまったく異なるものだ。仕事の仕方を人のやり方とまったく違うものにしたから、姿形も人とはまったく違うものになっている。取り付ける部品の形状も機械が仕事をしやすいように設計変更されたから高能率な機械化が可能になった。
 自動車や自動車部品は人が組み立てることを前提にして設計されている。それを自動化しようとすると人と同じような姿形をもったロボットがほしくなる。自動車部品の組み立てや自動車の最終組み立ては自動化が遅れており、人がほとんどを組み立てているのが現状である。
 自動車の革新的な設計変更が近い将来に実現できるとは思えないので、しばらくは人間と同じような組み付け方法(たとえば、双腕ロボット)で少しずつ自動化が進むのではないか?しかし、このような方法では、組み立てコストがどうしても高くなって、人間の作業者との競争では勝ち目がないのかもしれない。自動車の設計を革新して、効率のよい組み立て機械が開発されるのが最終的な形ではないか?そのときの受動組み立て機械は人間の姿形と相当異なるものになっていると思われる。
 自動車が電子部品挿入機のような組み立て機械で、低価格、高速で組みつけられるのはいつのことだろうかと考えると、その時期は見当もつかない。一方、そのように組み立てられるようになると、自動車の価格は暴落し、自動車産業はうまみのない産業になるのかもしれない。

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このページは、essahoiが2005年12月22日 14:47に書いたブログ記事です。

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