過去の歴史をふり返ってみると、戦争が技術を進化させた例は多い。国家が既にある民生技術を軍事転用するために大金を投入して技術を発展させる。または、軍事を目的に大金を投じて開発された技術が民生用にも利用される。前者の例では航空機(爆撃機)や電子計算機(大砲の弾道予測)、後者の例では原子力やインターネットなどが有名である。
ロボットを戦場で使うために米国などがロボットの自律機能の開発に大金を投入し始めた。プレデターに目標(ターゲット)追尾機能、自動車(軍需品補給用のトラック)の自動運転のための道路認識技術などがその例である。敵国も開発競争に参入するため、ますます開発競争がエスカレートする。最近になって、ロボット技術がこのような状況の中で大きく進展し始めたように感じる。
技術は諸刃の剣である。人類を豊かにするために使える一方、人類を危険に陥れる可能性も併せ持つ。特にロボットは小型化により、群衆の中に溶け込んでしまう、または紛れ込んでしまうことが可能なものである。技術が悪用されると非常に危険な状況を作り易い。悪用防止技術の開発研究を平行して進める必要があろう。
2006年8月アーカイブ
先日(7月10日)、NHKスペシャルで「軍事転用の戦慄 ロボット」が放映された。NHKならではの貴重な映像がたくさんあり、非常に興味深かった。
この番組を見て、十数年前に(日経?)サイエンス誌で特集していた「未来の戦争」の記事を思い出した。そこでは21世紀の戦争として、冷戦時代とは異なりテロリズムとの戦争を想定していた。冷戦時代のような大型兵器は役に立たず、情報通信ネットワークで連携した小型兵器が主体の戦争になると解説してあった。米国国防省はその予測の下に長期的に開発を進めてきたのであろう。そのような兵器の1例が今回NHKが取り上げていた無人偵察・攻撃機である「プレデター」と思われる。プレデターには監視カメラとミサイルが装備されており、遠隔地にいる操縦者が通信衛星を介して操縦し、戦場を監視しミサイルを発射する。監視カメラが捕らえた特定の物体を自動追尾する自律機能も持っている。遠隔操縦を基本とするが、自律機能を持っているからロボットと言えるだろう。
今回の映像にはテロリストがプレデターから発射されたミサイルで殺される場面があった(写真:NHKテレビから引用させていただいた)。「ロボットが人を殺している」というセンセーショナルな表現のナレーションがつけられていた。欧米人はロボットを悪魔として見るイメージを持っているといわれている。まさにそのイメージに近いもの(注1)を作り始めてしまった。
注1:ミサイル発射の判断はロボットではなく人間がしているから、真の意味では兵隊ロボットではないとも言える。