接触制御の高速安定性について

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 ロボットのツール端を環境に剛体接触させる場合、インピーダンス制御とコンプライアンス制御という二つの代表的な方式がある。これについてはRobotics Research社のWebサイトにわかりやすい説明が載っているので、それを以下で紹介する。

 Robotics Research社のR2ロボット制御はツールが力を発生するやり方としてインピーダンス制御とコンプライアンス制御の二つの方式を提供する。
 これらの二つの制御方式ともロボットツール端の動きが、ツール端の6自由度それぞれの方向にspring-mass-damper(ばね-質量-ダンパ)系になるようにまねる。(こうすれば接触時に環境またはロボット自身を破壊する恐れはなくなる。) このときツールや持っている部品(ペイロード)に働く重力の補正が当然必要になる。
 機械組み立てやグラインディング作業、磨き作業、ばりとり作業などは比較的高速で行われるので、過渡的に大きな接触力を伴うが、このような場合にはインピーダンス制御を採用する必要がある。インピーダンス制御はロボットのツール端が剛体である環境に対して安定な接触を維持するに必要な高い周波数応答性を実現できる(注1)。インピーダンス制御は各関節にトルクの発生を指令できるサーボコントローラを必要とする。したがって、ダイレクトドライブ(減速機なしのモータ駆動)かまたは関節トルクの検出センサを備えたマニピュレータのみがインピーダンス制御の対象になる(注2)。
 コンプライアンス制御は低ゲインかつ低応答特性でもよい用途向きである。この場合、接触安定性よりもアームのツール端に装着したセンサの6軸方向でより高精度な力計測が重要となる。質量および慣性主軸の計算はツールとペイロードの位置関係とロボットアームの質量と慣性によって決まる。

注1:ロボットの手先にセンサを持って接触力を制御する方式では安定な接触状態を維持することが難しい。ハンチング現象を起こしやすい。安定化するためには低ゲインにせざるを得ず、低応答性でも良い用途向けとなる。

注2:一般的にはインピーダンス制御というとロボットのツール端にセンサを装着した構造を含める。この場合には、理論的には環境側から見たロボットツールのインピーダンスを、ツールのバネ特性(コンプライアンス)や粘性特性(ダンピング)だけでなく、慣性特性まで含めて制御できる。理論的にはそうであるが、実際には手先にセンサをつけると、剛体接触時の安定性が低下する。したがって、Robotic Research社では、インピーダンス制御の場合には手先センサを使わない。このために、環境側から見たロボットツール端の慣性特性は制御できない(ロボットアームの慣性そのものとなる)。制御できるのは接触力の他にはコンプライアンスとダンピング特性だけとなるが、接触時の安定性は高くできるので、コンプライアンス制御とはいわずに、インピーダンス制御といっていると思われる。


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このページは、essahoiが2007年3月 9日 21:59に書いたブログ記事です。

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