産業用ロボットが新しい進化を始めたようだ。興味深いロボットがまだ未完成のものも含めていろいろ現れてきている。
産業用ロボットは日本の工場で既に数十万台が働いているが、基本的な性能は過去数十年来あまり変わってこなかった。産業ロボットは相変わらず柵で囲まれたスペースの中で、人より速い速度で、人より正確に、低コストで機械部品の組み立てなどをしている。ところが、このようなロボットの使い方は大量生産品に対しては効果を発揮したが、世の中の大部分を占める多種少量生産((米国)iRobot社のBrooksによれば世の中の製品の90%、主として中小メーカでの生産)に対応しようとすると、人とロボットを隔離する安全柵を設置する大きな床面積が用意できない。そこで、これらの多種少量生産品の生産はいまだに人の手に頼っているのである。
そこで、最近注目されているのは、以下のような条件を満たす新しいロボットの出現である。
(1)人が中心の生産現場の中で人と一緒に作業のできる安全なロボットである。従来のロボットは人を傷つけないように安全柵で囲う必要があったが、新しいロボットは安全柵なしで人の隣で作業ができる(ビデオ)。
(2)少量生産で、頻繁に生産内容が変化しても対応できるロボットである。このためには、ロボットは軽量で簡単に移動でき、作業のTeachingが簡単にできる必要がある。たとえば、ロボットのアームを持って安全に手先を案内(移動)することができ、位置姿勢の教示が容易にできる(Lead Through Teaching)。
(3)一人の作業者をロボットで置き換えるため、ロボット(プラス周辺機器)の価格は作業者の年間経費を大きく上まわらない。
このようなロボットはco-robot(collaborative robotの略)と呼ばれている。
co-robotが注目されるようになったのは、デンマークのUniversal Robots社製のUR型ロボットが発売されてからである。軽量のため、生産の場所が変わっても簡単に移動でき、さらに、専門知識がなくても簡単に作業を教え込むことができる「よく考えられたユーザインターフェース」を持っている。しかも、リスクアセスメントの実施により停止監視や衝突時の力制限などの安全性が確保されるので、安全柵などを必要とせず、低価格で作業のロボット化ができる。一方、作業速度は人並みな新しい種類のロボットである。
UR型ロボットは上記のような性能が生産現場に受け入れられて、世界で年間5000台を超える勢いで売れている。これがco-robotが注目され始めた原因である。
UR型ロボットの仕様を見てみよう。
UR3 |
重量11kg,可搬重量3kg、動作範囲:50cm半径域 最高速度1m/sec、繰り返し精度:+/- 0.1mm 衝突時の停止外力 60 N(6kg)~87N(8.7kg) (モータ電流の制御で外力を制御) 軽量のため運搬が容易 |
UR5 |
重量18kg,可搬荷重5kg,動作範囲:85cm半径域 2008年に完成 2009年に発売 、他の仕様はUR3と同じ |
UR10 |
重量28kg,可搬荷重10kg,動作範囲:130cm半径域 |
UR3,UR5,UR10の価格、寿命は |
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価格20,000-30,000ユーロ(280-420万円) |
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製品寿命 (useful life) 35,000時間 写真はUniversal Robots社のホームページから引用 |
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