2015年7月アーカイブ

 co-robotの重要な特性のひとつは、ティーチングが容易(短時間)に出来ることであり、どのco-robotもアームを手で掴んでアームの位置や姿勢を動かして通過ポイントなどを教える、いわゆるLead Through Teachingを採用している。

 各ジョイントにトルクセンサが取り付けてある独KUKA社のiiwaや米国Rethink Robotics社のBaxterなどは小さな力でスムースに動かすことが出来ている。

 一方、ABB社のYuMiやUniversal RobotのUR型はジョイントトルクセンサを持っていない。そのため、特にUniversal Robots社のUR型ロボットでは、ビデオで観察すると、腕を動かすのに大きな力が必要に見える。はたして、このような操作性で精密な位置決めのTeachingが出来るのか疑問符がつく。ユニバーサルロボット社は使いやすさを主張する根拠として、Lead Trough Teachingよりもむしろ、工夫されたTeaching Pendantを使ってのプログラミングのしやすさを主張しいる。

一方、 YuMiは軽く動かすことが出来ているようだ。

 ABB社によれば、YuMiはinovative force sensing technologyによってLead Through Teachingを可能にしていると言う。Universal Robots社によれば、UR型はForce MoveでLead Through Teachingを可能にしていると言う。これらはアーム手先に加えられる力をモータの駆動トルク(電流)などから推定して制御する手法(例:東芝レビューvol.66 No.5 2011)と類似な手法を使っていると思われ、ジョイントトルクセンサを必要としない。同レビューでは、衝突検出やダイレクトティチング(Lead Through Teaching)も可能と解説している。

 UR型で腕を動かすのに大きな力が必要に見えるのは、Force Moveの制御方法がYuMi(=東芝の手法?)とは違っているためと思われる。
 UR型のForce MoveはTeachingのためというより、むしろ安全停止のために用意されている。

結論を先に述べれば、その高価な値段(1000万円強)を1/3以下に下げない限り、工場用としては多くは売れないだろう。

 co-robotとしての性能は市販されている他のどのco-robotよりも優れていると思うが(teaching systemの使いやすさは不明)、値段が他のco-robotの2倍から数倍もする。ドイツにおけるLWR(Light Weight Robot)の研究開始はドイツの研究機関のDLR(German Aerospace Center)で1995年(20年前)に始まり、現在の形に開発が進んだのは2006年(約10年前)である。10年もたって高価な値段が下がらないのは目標としている用途が工場用ではなくて、宇宙用とか検査試験用とか、医療用など、高価でも使ってもらえる用途を対象にしているからではないか?そのため、構造的に理想を追求しすぎているのではないか?

 人と協調して仕事のできるco-robotの条件として、可搬質量と比較して本体質量をできるだけ軽量(2~3倍)にして、動作中に人と接触しても人を傷つけることなく短時間で(数ms?)停止できること、できるだけ省スペースで小型であること、移動・設置が容易で新しい仕事を速やかに立ち上げられることなどであろうか?

 LWR(iiwa--intelligent industrial work assistant)はこれをめざして、各関節にトルクセンサを組み込んだ7軸ロボットとして開発された。特徴としては、

1)ペイロード/アーム総質量の比率をできるだけ大きくするために筺体をカーボンファイバー入りのプラスティックスとしている。

2)形状をすべて曲面として接触しても傷をつけないようにしている。

3)関節ごとにモジュラー化されたドライブシステムを持たせた。パワーエレクトロニクスボード、デジタルエレクトロニクスボード、モータ、ブレーキ、モータ回転角度センサ、ハーモニック減速機、リンク回転角センサ、リンクトルクセンサなどがモジュラー化されている。ドライブシステムの中心部にはホール(穴)があり、パワーケーブル、エレクトロニクス通信用の光ケーブル、非常ブレーキ通信ケーブルなどが通っている。

4)関節にトルクセンサを組み込んだことで、非常にスムースな力制御ができ、衝突時の反力も小さくできるし、アームを持ってするティーチングも非常にスムースである。

robodrive.png

iiwa.png

 iiwaはその用途を工場用に限定せず、医療からホームロボットまで広く設定している。いままでに数百台は製造して、いろいろ用途で評価をしているが、工場用としてはなかなか広まらない。高価でも使ってもらえる用途をたくさん開拓して量産効果によって、価格を下げることを狙っているのだろうが、果たしてどこまで価格が下がるであろうか? Co- robot(Collaboration Robot) の主たる目的は、多種中少量生産の自動化であり、Rethink Robotics社のBrooks氏によれば、その価格は中小量生産企業の作業者の1年分の必要経費程度(200万円~300万円?)であろうとの見解がある。だとすれば、1/4~1/3に下げねばならないことになる。

 ここ1~2年の間に色々な新しい仕様の産業用ロボットが市場に発表されたが、その中でも従来にはなかった新しい市場を開拓したのはUniversal Robots社だと思う。ロボット自体を小型(スリム)軽量化し、衝突時の衝撃力を軽減して、安全柵をとりはずせたことで、工場設備の配置をいじらなくても、比較的簡単にロボットの追加設置ができるようになった。これで、それまでSME(Small and Midium sized Enterprises)において、自動化のネックになっていた作業を自動化することができるようになった。しかも、必要がなくなれば、簡単に他の用途に使いかえることができる。このような自動化の用途は特に中小企業(SME)では多く存在すると思われる。価格も比較的安い。Universal Robots社が後発であるにもかかわらず、販売台数を相当な勢いで増やしている理由はこの辺りにあると思う。

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