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 いままで観てきた安全なco-robotや、柵で囲む必要のある従来型の高速組み付けロボットなどは今後どのようにスマートフォンやタブレットに代表される電子機器の自動化に関係してゆくだろうか?

 ポイントは変種変量の混流生産である(注1)。iPhoneなどのスマートフォンやiPadなどの電子機器は発売時には生産量が多いが、短期間(数ヶ月~1年)で生産量が落ちてゆく。また、複数種類の製品が同じラインで生産される。

 このような生産ラインをロボット化しようとすると、ことはそう簡単ではない。Foxconnもロボット化を試みているが、まだ一部にとどまっている。

 変種変量の混流生産のロボット化には例がある。iPhoneのような電子機器ではないが、デンソーが、カーエヤコンの組み付けラインをロボットによって約70%自動化した例がある。50種類の仕様の違うカーエヤコンを同じ生産ラインで、1ロット6台ぐらいで切り替えて生産している(月産、約45万台)。生産量の増加、減少には、関連するロボット台数(=セル台数)を増減して調整する循環型生産方式で対応している(写真、上、出典 日経テクノロジーonline 2012/03/21)。

カーエアコン組み立て用セルの例.jpg


 電子機器の組みつけにロボットなどを利用して自動化率約47%を実現した例として、富士通周辺機(株)のWindows搭載タブレットの組み付けラインがある。ヒートパイプ、ファン、スピーカー、バイブレータなどの組み付けや、タッチパネルの試験をロボットにやらせている。今後、更に自動化率を上げて67%まで持ってゆく予定とのこと(写真、下、出典 PC Watch 2014/07/9)。100%ロボット化に成功すれば中国での生産に頼ることはなくなるはず。

 上記の二つの例ではco-robotを使ってはいない。だから、このような従来型のロボットを使ってもiPhone6や6plusの自動化もある程度できると思われる。

  しかし、ロボットを柵で囲わなくても良い扱いやすいラインをco-robotを使って実現できれば、世界の賞賛をえられるだろう。iPhoneは小型のロボットで扱えるので、co-robot化は容易かもしれない。

 Foxconnは生産ラインの内容を外部に漏らさないように秘密にしているので、ロボット開発も自動化ラインの構成も自力でやるつもりであろう。はたして、生産ラインを中国に残したまま生産を続けられるように、自力で自動化をタイムリーに進めることが出来るかどうか?co-robotの採用に挑戦してはどうか?



タブレットへヒートパイプを組み付け.jpg



 注1:1980年代には多くの水平多関節型(スカラ型)ロボットを並べた家電製品の組付けラインが導入されたことがあった(例:ソニーの家電組み立てライン)が、結局は、それらの大部分が撤去されてしまった。理由は家電製品の短命化が進んだために、製品の切り替えにロボットラインが対応できなくなったことである。短期にかつ低コストで新製品の組み立てに対応できた作業者を中心とした「セル型生産システム」に取って代わられてしまった。

 10ケ月前にサーバ用コンピュータがダウンしてしまい、しばらく放置していた。しかし、再びやる気が出てきたのでサーバを再構築した。10ケ月前までにアップしていた記事の一部のバックアップがしてなかったので、簡単には再現できなくなってしまったが、これから時間をかけて再度アップしてゆくつもりである。古い記事の再現もしたいが、新しい記事も書きたいので、並行的に進めてゆくつもりだ。

 福島第1原発の事故は収斂にほど遠い状況にあるように思える。高レベル放射能の排出、原子炉の爆発の可能性はなくなっていない。緊張の続く毎日のため、東電は先のことなど考える余裕がないのだろう。納得のできる今後の収斂シナリオは発表されていない。冷却水からのセシウム除去システムがうまく稼働したとしても、また冷却システムがうまく作動したとしても、いったい何時まで冷却するつもりなのか?残っている燃料は膨大らしいから、この先100年くらい冷却をし続けるのだろうか?それは現実的ではない。

 京都大学の原子力関連の教授がテレビで話していた通り、結局はチェルノブイリと同じようにコンクリートの石棺を作って、100年くらい?放置するしかないのかもしれない。その際、原子炉の周りに石棺を作るための鉄骨からなる枠組みを作らねばならない。高レベルの放射線が飛び交う中で誰がその作業をやるのか?

 高齢の作業員を動員して決死隊を構成してやるしかないなどと言っているが、そんな残酷なことが許されるのか?やはり技術立国の日本らしく、遠隔操縦で組み立ててゆく建設機械を開発しなければならない。宇宙では米国がロボットを使って構造物を組み立てる研究を続けている。それが参考になるのではないか?
 日本には高さ600m以上のスカイツリーを作れる技術がある。建築技術者、ロボット技術者の出番である。日本の技術力をもってすれば必ずできると思う。国民も応援するだろう。


 人口減少時代である。
 貴重な人材に機械でもできる仕事をさせるのは、その内できなくなる。一方、国内の製造工場が空洞化したら、再び国内で物を作ることができなくなる。国内で物が作れないと、海外から買わねばならず、国力は低下するだろう。
 そのような事態にならない前に、国内製造業のリーダは対策を考えておかねばならない。キャノンの御手洗会長(現経団連会長)はそのような先の見えるリーダの一人と思われる。例えばプリンターのインクカートリッジの製造ラインなどをロボットなどを使って完全自動化しようとしている(参照:
基幹部品も自動化設備も内製)。
 このような投資も最初のうちは思ったより大きなペイバックをもたらさないかもしれない。しかし、色々努力を続けるうちに、大きなペイバックを得られるようになることが期待される。技術は進歩するからである。
 現在、製造業では機械組立て作業の多くはまだ人手に依存するところが多い。特に従来型のロボット利用のコンベアラインで失敗して、人間中心の組み立てセルで成功してからは特にその傾向が強い。
 だからロボット化または自動化の努力が縮小しているように感ずる。新しい話題に接する機会が少ない。これでよいはずがない。新しくチャレンジしてゆかなければ発展はない。
 過去の研究で眠っている技術を掘り起こし、また、新しい"人間と共存できるパートナーロボット"などの研究結果をも利用しつつ、新しい自動化研究を進めて欲しいものだ。

 最近電機メーカが家電製品の製造工場を中国に移している。東芝などはシロモノ家電の殆どを中国で造っていると聞いた。製造コストが1/5ぐらいだから、国内ではいくら自動化してもかなわない。また、2007年3月10日20時0分配信 時事通信によると、松下電器でも同様に白物家電の国内工場の殆どを1年位かけて中国に移管し、国内の人員は異動または早期退職にしたいらしい。国内から完成品工場がどんどん消えてゆく。部品は国内でつくり、それを海外に輸出して完成品に組み立てるという製造モデルである。企業のコアテクノロジは部品にあるわけだから、海外に部品工場を作ると技術をコピーされやすい。そこで部品工場は国内工場で徹底した自動化を行うというのがこれからの方向らしい。国内に高度な自動化部品工場を作ろうとしているキャノンがそのリーディングエッジかもしれない。

 現在まで、自動車産業と電機産業が2本柱となって日本を支えてきた。ところが、電機業界の国際競争力が下がっているらしい(エコノミスト12/13,2005)。デジタル家電の新商品がすぐに値崩れしてしまい企業の体力が消耗している。商品の流通機構に問題がありそうだ。
 電機産業は過去10年以上にわたって、情報通信分野での未来商品の研究を続けてきた。それらは21世紀の日本を支える技術として、2010年には120兆円の産業に育つことが期待されていた。その結果、いろいろな技術や商品がが生まれてきている。ところが現状はビジネス的には大変苦戦をしているらしい。あたらしい商品を生み出すには苦労はつき物である。われわれコンシューマも厳しいが暖かいユーザとして商品の育成に協力してゆかねばならない。
 マルチメディア情報処理が中心技術となるデジタル家電は、その技術が、将来のロボット産業技術と共通する部分が多い。CG、画像処理、ヒューマンインターフェース、通信技術などはマルチメディア分野で開発された技術が役に立つ。日本の電機業界の頑張りに期待したい。たとえば、ソニーの「Cell」コンピュータやそのソフトウェアなどはロボット制御用コンピュータとしても大いに期待できるのではないか。

 日本は工場で使う産業用ロボットを世界で一番数多く稼動させている。その実績をベースに工場ではなく、家庭などで人の役に立つロボットを開発しようという動きが、日本では盛んになっている。8年前に本田技研が2足歩行する人間型ロボットを発表して以来、社会の期待が高まった。ソニー、トヨタ自動車というような開発力のある会社も家庭用ロボットの開発競争に参加した。一方、世界はどうかというと、米国などは人間型の開発には企業も国も(大学は別)、インターネットで調べる限り熱心のようには見えない。一方、今月になってソニーは人間型ロボットの開発を縮小すると発表した。経営の悪化を背景に、本業回帰が必要になったためである。ロボット開発研究の浮沈は、今も昔も変わらないようである。ロボット産業はこのような盛衰を繰り返しながら今日まで来ている。
 このような状況の中で、産業用ロボットが世に出てきた数10年前の状況なども振り返りながら、これから世の中に役立ってゆくだろうロボットの姿を、一市民の立場で、いろいろな角度から考えてみたい。

mslave2.jpg

左の図は産業用ロボットの出現に先立って、1948年頃に米国のアルゴンヌ(原子力研究所)で使われていた「マスタースレーブ式マニピュレータ」である。放射性物質を遠隔操作で取り扱う。

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