2004年5月アーカイブ

 私のようなカメラ入門者には、マッド・サイエンティスト研究所の「ボケの考察」(注1)はカメラを理解する上で大変参考になった。ボケの比を表す数式を私なりに再解釈して下記のように納得。

 1.コンパクトデジカメと一眼レフデジカメとで、そのボカシ能力(=ボケの比(β))を比較する場合には、その実焦点距離(35mmフイルム換算ではない)を調べればよい。ボカシ能力は実焦点距離に比例する。コンパクトデジカメの実焦点距離は一眼レフデジカメのそれの数分の1であるから、ボカシ能力も数分の1である。

 2.望遠カメラで背景を大きくぼかすには、絞りのF値をなるべく小さく(絞りを開ける)し、被写体にできるだけ近づき、背景までの距離を被写体までの距離に対して十分に長くとり、なるべく望遠側(=ズームアップする)で撮影すればよい。1台のカメラについていうと、ボカシ能力は焦点距離の二乗で効くからきるだけ望遠側で撮ることが効果的である。しかし望遠側では最短焦点距離が長くなり、被写体に近づくとピントが合い難くなるので注意が必要である。

 注1: http://homepage3.nifty.com/anoda/oldpage/space/mlab18/mlab18.htm   
(付録にある解析はMathMLを使っているので、MozillaまたはNetscape7.0でしか読めません)

 証明:
  
 マッド・サイエンティスト研究所さんのボケのモデル
  β=(α/A)*D   ・・・式(1)
   ここで、
    β:ボケの比(B/x)、Bは背景(∞遠方)のボケの大きさ、xはフィルム(またはCCD)の大きさ
    α:像の大きさの比(a/x)、aは被写体のフィルム(またはCCD)上での大きさ
    A:被写体の大きさ
    D:レンズの有効口径(=レンズの焦点距離f/開放絞りのF値)

 検討1:
  デジタル一眼レフとコンパクトで次カメのボカシ能力(=ボケの比(β))の差は、その焦点距離の違いに比例することを示す。
    α=a/x
    1/A=f/{a(L-f)}  (なぜなら a/A=f/(L-f) )
    D=f/F
   ここで、
    f:焦点距離
    L:被写体ーレンズ間の距離
    F:開放絞りのF値
   これらを式(1)に代入すると、
    β={1/(L-f)}*(f/x)*(f/F)  
   L>>f だから
    β≒(1/L)*(f/x)*(f/F)  ・・・式(2)
  式(2)においてβ値をコンパクトデジカメと一眼レフデジカメの場合について比較すると、L、F,(f/x)はそれぞれで同じ値であるから、ボケの比(β)は焦点距離(f)のみに比例することがわかる。

 検討2:
   一つのカメラについて言えば、ボカシ能力(ボケの比)は、焦点距離の二乗に比例し、被写体とレンズ間の距離、絞り値Fに反比例することを示す。
   式(2)は式(3)のように書き換えることができる。
    β≒(1/L)*(1/x)*(1/F)*(f*f)   ・・・式(3)
   ここで(1/x)は一定であるから、βはfの二乗に比例し、LとFに反比例することがわかる。
   つまり、背景を大きくぼかすには、絞りのF値をなるべく小さく(絞りを開ける)し、被写体にできるだけ近づき、なるべく望遠側で撮影すればよい。焦点距離は二乗で効くから、できるだけ望遠側で撮ることがもっとも効果的のはずであるが、望遠を大きくすると最短焦点距離が長くなるので、被写体に近づきにくくなる。総合的に考えて条件を決める必要がある。

 コンパクトデジカメでは対象物の背景をぼかすことがなかなか難しい。ボケの度合いは他の撮影条件が同じならばレンズの焦点距離に比例する(注1参照)。コンパクトデジカメではデジテル一眼レフカメラに比較すると焦点距離が数分の1と短いために、ボケの程度は数分に1になる。焦点距離が短くなったのに比例して望遠レンズが小型化できた結果、FZ10のような超望遠・小型軽量カメラがでできたわけだから、この特徴を優先するならボカシ能力の低下はやむをえない。
 背景のボカシは対象を正確に写すというよりも芸術的な表現を豊にするものだ。たとえばポートレートで背景をぼかして人物の印象を高めることができる。これを期待したい人はデジテル1眼レフカメラを買った方が良い。

 写真:FZ10でも撮影条件を選べば、この程度のボカシは可能。

注1:マッド・サイエンティスト研究所
  http://village.infoweb.ne.jp/~anoda/space/mlab18/mlab18.htm 参照
  ボケの度合いはレンズの有効口径(=焦点距離÷開放絞りのF値)に比例する。よって、開放絞りのF値が同じならばボケの度合いは焦点距離に比例する。
 デジタル一眼レフカメラとコンパクトデジカメとで同じ被写体を同じサイズで撮った場合を例にとって背景のボケの程度を考えてみよう。ただし、両者の解放絞り値Fは同じとする。デジタル一眼レフカメラとコンパクトデジカメの焦点距離の比をr(>1)とすると、
  1)コンパクトデジカメの開放絞り値をF/rにすればデジタル一眼レフカメラと同じボケが得られるはずである(実際にはそんなことは不可能)。 
  2)または、逆に、コンパクトデジカメではデジタル一眼レフカメラをr*Fまで絞った場合と同じ程度のボケ度合いしか得られない。
  ということが言える。

 早速、1.5倍のテレコンを付けて近くの天白川近辺を歩きました。
 デジタルズーム2倍で一脚スタンドを使っての撮影例をアップしておきます。
 川鵜の顔がアップで撮れました。(4月30日午前6時26分、天白川ー南天白中学付近にて)

 サギの目の薄緑色がきれいに撮れました。(4月30日午後5時58分、新池にて)


 Webサイトの記事を見ていると、デジタルズームというのは緊急避難のツールと考えた方が良いという意見がほとんど。超望遠を軽量で実現する手段という位置づけは議論されていない。

 しかしWebサイトにアップする写真用ということであれば100万画素あれば十分であるから、400万画素を持つFZ10の場合デジタルズーム2倍(有効画素100万)は十分に実用レベルである。1.5倍テレコンxデジタルズーム2倍を使えば、F2.8,1260mmの超望遠で100万画素写真が総重量1.2kgの軽量で楽しめる。野鳥撮影で威力を発揮してくれると思う。

 比較結果:
 テレ端(420mm、400万画素)、デジタル3倍(1260mm、45万画素を400万画素に展開)、1.5倍テレコン×デジタル2倍(1260mm、100万画素を400万画素に展開)の3種類の写真を撮ってみた。デジタル3倍(1260mm、45万画素)はボケており、あまり魅力はない。しかし、1.5倍テレコン×デジタル2倍(1260mm、100万画素)ではシャープな写真が撮れている。
(注:下記の写真はオリジナルの400万画素写真を75万画素へリサイズして掲載してあります)

写真:テレ端(420mm、400万画素)。(画像クリックで拡大)

写真:デジタル3倍(1260mm、45万画素)。(画像クリックで拡大)

写真:1.5倍テレコン×デジタル2倍(1260mm、100万画素)。画像クリックで拡大

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