関節トルク制御のサーボをどのような伝達系、減速機で行うのかという問題もある。力制御を古くから研究しているスタンフォード大学のProf.Khatibはいろいろな伝達系を試みをしている。最初はPUMAロボット(1から2段の歯車減速機)。次には1段で1:30程度の減速比が得られる特殊歯車(バックドライバビリティを重視)。最近ではワイヤー駆動方式(アームの軽量化を重視)を研究して十分な力制御特性を実現したようである。ワイヤー駆動方式ではモータをアーム側に設置せずに、台座に固定してワイヤーで関節まで動力を伝達するのでアームが軽量化できる。Barrett Technology社のBarrett armはワイヤー駆動方式の高速ロボットとして有名で研究用として市販されている。しかし、実用機で必要とされる耐久性が問題である。特にワイヤー式はエレベータの例でのわかるように頻繁なメンテナンスが必要で、産業用ロボット用としては向かないかもしれない。実用化にはワイヤーケーブルの耐久強度の一層の向上が必要になろう。小型軽量という面ではハーモニック減速機は有効ではあるが低剛性、大きな起動摩擦、バックドライバビリティの低さ、耐久強度の低さの面で問題も予想される。しかし、LWRでは十分高速な力制御特性を実現している。耐久性についても色々と改良が進められ、小型の産業用ロボットでは広く使われ始めているようであり、大きな問題は無いのかもしれない。LWRではハーモニック減速機の低剛性を補償するために減速機の後にも回転角度エンコーダを入れているようである。歯車式で高減速比の減速機で高剛性、低起動摩擦、バックドライバビリティの良さなどで評価されている遊星歯車型減速機がある。DLRではLWR1(試作1号機)で遊星歯車型減速機を採用したが、LWR2(試作2号機)、LWR3(試作3号機)ではハーモニックドライブに変更した。理由は不明である。市販の産業用ロボット(位置制御型)の多くはRV減速機のような特殊歯形減速機構を使っているが、この減速機を使った力制御性能に関しては筆者は良く知らない。RV減速機の伝達効率(90%)はハーモニック減速機のそれ(70%)より良いので、それなりの性能が得られると思われる。ファナックが商品化した知能ロボット(力制御可能)の減速機は何を使っているのだろうか?制御の応答性はLWRと比較してどうであろうか?興味は尽きない。
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