がんは長年の研究努力にもかかわらず、ここ5年くらいは死亡率が低下していないという中々手ごわい病気だ。脳梗塞や心筋梗塞は病気が発症しても、何とか完治できるケースが多いように感ずる。一方、がんは罹患しても自覚症状が無い場合が多く、(1年から2年後に)症状が出たときには進行がんになっていて、治療不可能というケースがしばしば発生する。このためわれわれは年に一度は人間ドックに入って検査を受け、完治の可能性が高い早期がんのうちに治療が開始できるように用心している。なにせ、日本人の二人のうち一人が一生のうち一度はがんに罹っている時代だ(参考文献:愛知県がんセンターNEWS 第2号、平成14年1月1日発行、大野龍三)。しかし、ここに問題が隠れている。特に人間ドック専門機関は受診者が選定した検査しかしない。定番の半日検査コースというのが一般的で、多くの人はこれを毎年受けている。このようながん検診を受けていたのにがんで死んだ人の例を知っている。受診者はがん検診を受けているからと安心してしまい、実は検査を受けていない部分でがんの発症の可能性があることを忘れてしまいがちである。これがかえって早期がんの発見を遅らせていることになっていないか?小生の場合は前立腺のPSA値が危険範囲に入りかけていたのに気がつかなかったし(幸いにも前立腺がんではなかったが)、大腸炎になって初めて大腸のレントゲン検査を一度も受けていないことに気がついた。半日コースではPSA値の測定と大腸レントゲンは検査項目に入っていなかったためである。大腸がんは3大がん(胃がん、肺がん、大腸がん)のひとつであるのに、半日コースでは便の潜血検査しかしない。しかし、潜血検査でも検出できない大腸がんは全体の3割もあるそうだ。このような知識を人間ドックでは教えてくれないのは問題だ。
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