高倍率のズームがコンパクトカメラで実現できることもデジタルカメラの大きな特徴だ。これはフイルムに相当するCCD(撮像素子)が35mmフィルムサイズムよりずっと小さくてもある程度の写真品質を実現できるからである。
写真:Panasonicのデジタルカメラカタログから引用
しかし、CCDを小さくしてゆくとCCDの出力信号に占めるノイズの割合が増加し、感知できる明るさのダイナミックレンジ(画像の中で一番明るい部分と一番暗い部分の明るさの差)が狭くなって行く。だから写真品質を維持するためにCCDの小型化には自ずと限界はある。そのような中で、FZ10は電池込みでわずか550グラムという軽量小型の筐体に400万画素、420mm(35mmフィルム換算)ズームを組み込むことに成功している。
FZ-10の仕様書を見ると12倍ズーム時の焦点距離は35mmフイルムカメラ換算では420mm、実焦点距離は72.0mmで、約1/6になっている。したがってCCDのサイズ(1/2.5型)は35mmフィルム((36mmx24mm)に対してその1/6の約6mm×4mmとなる。言い換えると、CCDの縦横サイズを約1/6にしたから、レンズ焦点距離も1/6ですみ、ズーム機構も1/6の大きさに小型化できたわけだ。
一方、35mmフィルムに近いCCDサイズ(23.7mmx15.6mm)を持っているニコンのD70(610万画素)に比べると、FZ10(400間万画素)の1画素の面積は約1/10になってしまうので、信号出力(感度)は小さくなりノイズの影響をそれだけ受けやすくなる。逆にニコンのD70はFZ-10より10倍暗い被写体でも写せることになる。さらに言えばDZ-10はシャッター速度が速くできるので、手振れ補正機能がなくてもFZ-10と同程度のぶれの少ない写真が撮れることになる(注1)。
全ての性能を満足することはできない。長所と短所は物事の両面である。何を選んで何を捨てるかの選択が商品を作るわけで、FZ10は小型軽量ズームを選んだ。携帯性を重視する私にはFZ10は楽しく使えそうなカメラである。
注1:2004年7月31日に一部修正
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