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 Universal Robots社のURロボットは世界で最も売れている協働型ロボットである。人気のポイントは従来型の産業用ロボットと異なり、人と接触しても安全性が高いために、ロボットを安全柵の中に入れなくても使えることである。

 URロボットは、前回解説したRethink Robotics社のSawyerロボットのように、アームを手で軽く動かすことはむつかしそうだが、大まかには動かせるので、残りの細かい位置・姿勢の設定だけをTeaching Pendantでやればよい。

 今回のテーマはUR ロボットのアカデミーのWebサイトで学ぶことができる。
 
 独特なロボット言語体系を持つが、命令言語を直接打ち込むのではない。ノートパッド型のティーチングペンダントで命令ボタンなどを選択しながら、アームを動かして設定したい位置姿勢などを記憶させ、プログラムを完成させる。文字入力にはウェート時間や負荷質量などがある。UR社ではストレートフォワードなプログラミング方法だと宣伝している。理解しやすいと思う。

 プログラミングは下図1のようなempty(空の)プログラムから始まる。   

              図1teaching2-1.jpg

 次に、Moveボタンを押すと、Move命令と仮の移動目標位置がWaypointとして表示される(図2)。WaypointがMove命令と同行ではなく、一段下にインデントされて配置されのが特徴である。ロボットアームを手で動かすか、またはティーチングペンダントを使って最初のWaypointまで動かしてOKボタンを押すと、仮のWaypointが実際のWaypoint_1に変更される。同じMove命令(Movej,Movel,Movep,Movec)が続く場合は、Move命令は省略してWaypoint(Waypoint_1,Waypoint_2,...)だけが並ぶのが特徴である(図3)。

             図2

panel2_2.jpg

 同様にして、最後の点までを記憶させてゆく(図3)。

             図3


UR_Robot_Panel_2_5.jpg

 次に、Waypoint_2で品物を把持させたければ、Waypoint_2に移動した後にハンドを閉じる命令

  Set TO[0]=On

 を設定して、ハンドを閉じ品物を掴む。把持すればハンドに品物の質量が負荷されるので、Set命令の設定テーブルの中で

   Set the total payload to 1.6 kg

 として指定し、負荷質重を外力(外乱)と間違えないようにする(図4)。

             図4

panel3.jpg

 次に、ハンドが品物を掴むまでにかかる時間を Wait命令で

   Wait 1.0 second 

として、Waypoint_2で確実に品物を把持してから、MoveLでWaypoint_3(図5)へ移動するようにする。

             図5

teaching6.jpg

 

 

 トヨタ自動車が2016年1月にシリコンバレーにロボット関連の研究会社(Toyota Research Institute Inc. 2020年までに1200億円を投入)をつくった。
 ・事故を起こさない車(完全自動運転車とは限らない)
 ・幅広い(年齢、その他)層の人々が運転できる車
 ・モビリティ技術を使った屋内用のロボット
 ・人工知能を使って科学的、原理的な技術の研究
が主な研究テーマだ。(TOYOTA Global Newsroom,Jan.05.2016を参照)
 筆者としては、屋内用ロボットの開発に大いに期待している。

 一方、Googleも
 ・自動運転車
 ・ロボット
 ・その他
 などの開発を掲げている。
 
 両社はともにシリコンバレーの会社であり、開発テーマの分野も重なって、良い意味で開発競争を始めることになるだろう。大いに開発競争を繰り広げてもらいたいものだ。

 Googleでは、自動運転車は未解決の問題を多く包含しつつも、完全自動運転車を目指して開発が続行されているようだ。
 しかし、ロボット開発の内容は、リーダの3度にわたる辞任、退社により不明確だ。ロボットグループのリーダには絶対なりたくないという社員が多いといううわさもある。IT Media News(2016.01.18)によると、米New York Timesからの記事として、最新のリーダはノキア出身のハンス・ピータ・ブロンドモ氏だということである。プロジェクトのリーダとしての経験が豊富な人物らしい。

 初代のリーダであったルービン氏が買収した会社は8社にわたる。

2013年12月02日 SCHAFT Inc.(日) 東京大学発のベンチャー 、アンドロイドの開発
12月03日 Industrial Perception(米) 産業用のロボットアームの開発
12月04日 Redwood Robotics(米) 産業用のロボットアームの開発
12月05日 Meka Robotics(米) ヒューマノイドロボットの開発
12月06日 Holomni(米) ロボットの無指向性(全方向)車輪の開発
12月07日 Bot & Dolly(米) ロボットカメラの開発
12月10日 Boston Dynamics(米) 4足歩行ロボット(BigDogなど)の開発
2014年01月26日 DeepMind Technologies(英) 人工知能開発

 GoogleのCEOであるラリー・ページ氏がロボット開発に意欲的なため、何度も新たなリーダを任命して、研究開発を進めようとしている。買収した企業の商品を見ると、開発テーマはルービン氏がGoogle在籍時にロボットチームの目標として提案したように、2020年までに「フィジカルな世界と交流できるコンシューマ商品」の先駆けを作るというものに尽きるのではないか?新リーダの手腕に期待したい。

 以前から、Gooleが産業用ロボットを開発するといううわさはあり、また一方では、退社したルービン氏がFoxconnと個別に産業用ロボットの開発を進めているのではないか?といううわさもある。

 ここでのキーワードは多量生産にたけたFoxconnである。Googleが買収したのは企業の商品ではなく、人材だと思うべきだ。多彩な発想豊かな人材を一つの製品テーマに収斂させて、2020年までに世界を変えるロボットを作ろうとしているのだと思う。まず手始めにFoxconnと産業ロボットを開発し、次にコンシューマロボット用ロボットを狙うのではないか?それとも、ルービン氏が産業用ロボットを、Googleがコンシューマ向けロボットをそれぞれ開発するのか?

 DBJ(日本政策投資銀行)の今月のトピックスNo.238-1(2015年8月21日)の内容(PDFファイル)がWebに載っていた。その中に下の左側の写真(2015ハノーバメッセ)が掲載されていた。ボッシュの工場で働く協調型のロボットで台座が可動式になっている。ロボットを必要な時に、必要な場所に移動し、安全柵なしで設置できる。同じロボットの写真が2015年12月30日の朝日新聞朝刊の経済欄にも載っており、"ロボットのセンサが横の働き手の動きを感知しながら共同作業をする。人とのスピードが落ちればロボットもそれに合わせる。"との説明がしてあった。

ボッシュ工場.jpg

iiwa-thumb-302x251-285[1].png

 

 このロボットは、ドイツの航空宇宙研究所とKUKAが10年以上をかけて開発を続けてきて、現在でもIndustry4.0の看板ロボットとしてよく引用される、人と協調できるロボットiiwa(Light Weight Robot、右の写真)ではない。初めて見るロボットである。

 以前にこのブログ(2015年7月25日)でも紹介したように、iiwaは高性能ではあるが高価(約1000万円)すぎる。そのため、上図左に示す低価格な協調ロボットを新たに開発をしたのではないか?
 ファナックがやったように、同サイズの位置制御型ロボットを改造して、各ジョイントにトルクセンサを装着させ、腕をソフトなカバーで覆っているようだ。

 iiwaが今後どのように使われてゆくか?興味深い。その高性能さを生かして、特別な用途向けに利用してゆくか、あるいは、設計を見直して低価格化するか?

 先日の2015国際ロボット展で、デンソーウェーブが小型の双腕co-robotを出展していた。この分野での先輩ロボットであるABB社の小型双腕ロボットYuMiも展示されていた。今回さらにGoogleがFoxconn(iPhoneなどを製造している台湾のEMS)と共同で開発するロボットのプロトタイプになるか?と紹介されたSRI製の小型双腕ロボットが分かったのでここで引用したい。Googleは以前、Google Glass(眼鏡につける表示用のインターフェース?、人気が出ずに発売中止となった)を販売しようとしていたが、この生産は中国ではなく米国で行おうとしていた。米国で生産するためには、生産の自動化が必須であり、そのために小型のロボットが必要になる。

Google.corobot.jpg


米国SRI(いろいろなシステムのスタートアップを行う研究機関)が遠隔手術用に研究している小型双腕ロボットアーム(引用;Siliconbeat Feb 11,2014 "Google and Foxconn's plan for robotic domination should come as no surprize")。GoogleがFoxconnと共同で開発する生産用のロボットのモデルになるか?

双腕cobotta.jpg

デンソーウェーブの小型双腕ロボットCobotta(co-robot、片腕6軸、リーチは約600mm? 参照;Response.15th 自動車 2015.11.27)




YuMi.jpg


ABB社の小型双腕ロボットYuMi(co-robot、片腕7軸、リーチは約600mm? 参照;http://new.abb.com/products/robotics/yumi


 上記の3つのロボットとも、電子機器などの精密小物組み付けを視野に入れている。この分野はアジアだけとっても1000万人の工場作業員の手作業に依存している。クカ社のティル・ロイター氏は、同業界には2020年までに50万台のロボットが必要になると予測している(RoboNews2015/02/15から品用)。果たして双腕型小型ロボットが電子機器などの小物精密組み立てに合目的なのか、は今後のフィールドテストに待たねばならない。

 12月2~5日に東京ビッグサイトで2015国際ロボット展示会が開催された。最終日(5日、土曜日)にでかけて、産業用ロボットから、サービスロボットの現状を広く見ることができた。

 1.関心があったのは、

 1)人と協働動作できるロボットco-robot(海外製)
  ABB社のYuMi、KUKA社のiiwaシリーズ、Rethink Robotics社のSawyer、Universal Robots社のURシリーズなど

 2)人と協働動作できるロボットco-robot(国内製)
   デンソーウェーブ(Cobotta)、カワダロボティックス(Nextage)、ファナック(CRシリーズ(4,7kg))、安川電機(HC-10)、川崎重工(DUARO)など

 3)ビンピッキング(ファナックをはじめ複数社)、オフラインシミュレータ(ロボットメーカ、他数社)、ORiN(デンソーウェーブ、ORiN協議会)などのソフトウェア

 4)災害対応ヒューマノイドロボットの実演
産業技術総合研究所(HRP-2改)、東京大学(Jaxson)、千葉工業大学など(HYDRA)

 5)サービスロボット、その他
トヨタ自動車(HSR)、パナソニック(HOSPI)



 2.それぞれのロボット詳細について
   各ロボットに関しては、過去にもWeb上に動画や写真で説明があったので、このWebサイト(ロボットあれこれ)でも今までいろいろ取り上げてきた。それぞれの動きについては予測はしていたが、今回、実際に触ってみたものについて予測との一致度合などを補足説明する。

 1)co-robot(海外製)のダイレクトティーチング特性など

 (1)ABB社のYuMi
 想像していた通り、ダイレクトティーチングでは、腕は軽くスムースに動かせた。腕を押すのをやめると、ブレーキストップのような感覚で急に止まるのが特徴。ロボットの姿勢から各軸にかかる自重による負荷トルクを計算して、バランスをとっているようだ。アームにはマグネシウム合金が使われており、軽量化に重点が置かれた設計になっている。

(2)KUKA社のiiwa
手で押す操作に非常に滑らかに反応して動く。始動から停止まで、サーボでバランスを制御している(コンプライアンス制御)。押すのをやめると、YuMiのように急に止まるのではなく、スピードが次第に落ちて止まる。アームにはカーボンファイバーが使われており、軽量化を重視した設計になっている。

 (3)Rethink Robotics社のSawyer
   KUKAのiiwaに近いが、滑らかさでは劣る。ばねが各軸に入っているためか、押すとまずばねが縮んでからサーボが動き出すので、少しぎくしゃくした始動になりやすい。停止はスムースに止まる。 

 (4)Universal Robot社のUR5型
   予想通り、ダイレクトティーチングには海外製の4種のロボットの中では一番力が必要である。これではきめ細かいティーチングをすることは、ほとんど不可能ではないか? 2015年には日本で約100台のUR型が売れたとのこと。販売先は中小企業かと思ったら、日本の場合、大企業が多いとのことで、予想外だった。



 2)co-robot(国内製)のダイレクトティーチング特性など

 (1)デンソーウェーブ Cobotta
 直接アームに触れる機会がなかった。今回初めて一般公開された。アームの大きさから類推するとダイレクトティーチングの操作性はYuMiと同レベルではないか?YuMiは7軸であるがCobottaは6軸の点が異なる。YuMiと似た双腕型も展示されていた。双腕型は腰部に回転と曲げの自由度がある点がYuMiとは異なる。Cobottaの写真とビデオを参照しておく。Cobottaはまだ開発の途中らしく、サーボに細かい振動が乗っていた。

 オープンプラットフォームを採用している点が特徴で、誰もがロボットアプリケーションを開発できるとのことである。デモでは音楽に同期してロボットアームがダンスをしていたが、このようなアプリケーションを書ける点が、従来の産業用ロボットにはなかった特徴となっている。ROSのミドルウェアなども使えるようになるのだろう。ユーザから新しいアプリケーションが発明されてくる可能性も十分に期待できる。ロボット機能が新しい展開を始めるかもしれない。面白い試みと思った。川崎重工も同社の7軸ロボット(MS005N)の制御インターフェース(オープンAS)を公開し、MUJINのPick Worksをインストールしてビンピッキングのデモをしていた。同様の試みである。注目してゆきたい。

コボッタ単腕・双腕.jpg

Response.15 (自動車) (11月21日ホームページから引用)








 (2)川田工業 Nextage
   直接アームに触れる機会がなかった。7軸すべてが80w以下のco-robotである。思ったより小さい印象だった。2014年6月現在で150台以上が売れているとのこと(web週刊ダイヤモンド2014年6月14日号)。

Nextage.jpg















 (3)ファナック CRシリーズ
   小型協働ロボットとして、今回の見本市で初めて公開された。全軸トルクセンサを装備し、ジョイントトルク制御を行っている。スムースに反応ができる。アームはソフトカバーでおおわれており、衝突時の衝撃を和らげている。可搬加重4kg(CR-4iA),7kg(CR-7iA、CR-7iA/L)の計3種類がある。構造はiiwaのように軽量化されておらず、従来型と同じ設計(リーチ550、911mm、自重20kg,27kg))のようである。

ファナック小型協調ロボット.jpg


日刊工業新聞 ニュース/ロボット〈2015.12.02から引用)












(4)安川電機 Motoman HC-10
全軸トルクセンサを装備し、ジョイントトルク制御を行っている。スムースに反応ができる。構造はiiwaのように軽量化されておらず、従来型と同じ設計のようだ。

安川電機青色ロボットのコピー.jpg

W.マイナビニュース(2015.11.30から引用)














(5)川崎重工 DUARO
  直接アームに触れる機会がなかった。スカラ型双腕ロボット。



3.ソフトウェア関連について

  1)ビンピッキングビジョンのデモが数多く見られた。

  研究の歴史は古いが、ビン状態の部品を識別する技術が相当高まっていることが分かった。ファナックとPFNがファナックのブースで、(株)3次元メディアの3次元ロボットビジョンシステムが安川、川重、三菱、MUJINのブースで、キャノンのマシンビジョンシステムが川重、安川、デンソーウェーブのブースで、それぞれデモを行っていた。

  キャノンと3次元メディアのビジョンシステムは「パターン投影による3次元距離画像計測と濃淡画像解析を併用した方法で、部品のCADデータを必要とする。異なるビン状態の対象物を5パターン見せることで準備が完了」する。 キャノンの例では認識時間は2.5秒程(下図、ビジョンシステムの処理)とのことである。

キャノンビジョン処理のコピー.jpg

  一方、PFN(Preferred Networks社)の方法は、現在注目が高まっているディープラーニング使っている。この方法はCADデータなどを必要としない。「実際にロボットで部品を取らせてみて失敗と成功の画像例をそれぞれニューラルネットワークに学習させてゆく。5000回の学習の後では、ピッキングの成功率は90%程度」になる。認識に要する時間はキャノンの例と同程度と思われる。ただし、この方法の問題点は、学習に要する時間が数時間~数十時間と長い点である。まだ研究途上で実用までにはまだまだ時間を要すると思われる。

2)オフラインティーチングシステム

  現在では、ロボットメーカーはティーチング時間を短縮するために、オフラインティーチングシステム(3次元ソリッドモデル)を用意している。しかし多くは、画面上でウェイポイント(waypoint)を指示する必要がある。

  一方、(株)MUJINのティーチングシステム"Pick Worker"はウェイポイントを自動発生し、ロボットの特異点や障害物回避ができる軌跡発生を自動でおこなう。ビン状態の部品箱の位置と部品整列箱の位置を教えるだけで、3次元画像処理システムからの信号を受けて部品をピックし、整列箱の整列することができる。このように、ロボットの知能化が進むにつれて、特定の作業全体をアプリケーションとして販売できるようになる。"Pick Worker"だけでなく、いろいろの作業がアプリとして販売され、ロボットがスマホのように簡単に機能追加できるようになってゆくのだろう。


3)ORiNの利用状況について

   ロボット向けのシステム構築支援ソフトウェアであるORiNがどのように利用されているか興味があったので気に留めながら見学した。その結果、表に出してPRしていたのは、メーカーとしてはデンソーウェーブのブースだけであった。その他にORiN協議会が1ブースを使ってPR活動をしていた。これから見ると、ORiNはまだ、他のロボットメーカには広く使われているとは言い難いようだ。広まらないのはロボットメーカが十分にその価値を認識していないからであろう。ORiNが従来方法に対して圧倒的にシステムの準備時間を短縮できることを、いろいろな具体例で示すことができれば、ユーザは競って使うはずである。

 今までこのブログで、ここ数年の産業用ロボット進化として注目してきたのは、いわゆるco-robotと言われる"人と共存できる産業用ロボット"の出現であった。今まで、ロボット化が進んでいなかったSME(Small and Mediam sized manufacturing)用のロボットとして、広く導入が進んでゆくだろう。

 実際に工場で使われている例を見てみると、Universal RobotのURシリーズも、Rethink RoboticsのSawyerも、NC工作機械へのマシンテンディング、二つのコンベア間の部品の搬送、パッケージングなど、単一のロボットでの作業がほとんどで、人一人に代わって狭いスペースで仕事をしている。複数台で協調して組み立て作業をしている例はWeb上では発表されていない。KUKA社のiiwaもそのような例は発表されていない。高加減速度や高位置精度(±0.02mm)が要求される組み立て作業のへの応用は、UR5やSawyerやiiwaのようなロボットには向かないようだ。

 可搬重量が500gと小さいが、YuMiは実用的な加減速度と精度(±0.02mm)を持っている。人と共存するロボットを標榜するなら、YuMiの制御方式などをもっと研究する必要がある。

 YuMiの例を見れば、現状の産業用の小型多関節ロボットのような可搬重量が数kgでも、数m/secの高速、高加減速度、高精度(±0.02~0.03mm)で、かつ低価格なco-robotは実現できるのではないか?まだまだ、研究の余地があると思われる。

 Rethink Robotics社の単腕7軸、co-robotのSawyerが、フィールドテストをおえて、最近発売になった。同社の双腕co-robotのBaxterとは異なり、減速機にハーモニックドライブを使い、位置や速度の精度が上がったようだ。位置の再現精度が0.1mmという記事もある。価格は$29,000で双腕のBaxterの$25,000より高い。単なる品物の搬送ではなく、Machine tendingなどの作業用のロボットとして売り出した。7軸だから、狭い場所でも器用に障害物をよけて作業ができている。安全で使いやすいco-robotとして、中小企業の生産工場で、現状の生産設備を大きく動かすことなく設置できる利点を発揮して、人気を得ることができるだろう。競争相手はユニUniversal Robot UR5($28,000)であろう。

 ただし、電子機器や電気機械(スマートフォン、カメラなど)のような0.1mm以下の位置精度で、高加減速度での位置決めを必要とするような組み立て作業への適用は、構造上難しいだろう。位置決めに時間がかかりそうである。手先に設置したカメラで位置補正するにしても、補正のための時間が許容の範囲内には収まらないだろう。

 Sawyerに期待したいのは、人工知能をどのように使ってロボットの使用範囲を広げるか、という点である。Rethink Robotics社のCTOであるBrooksはBaxterやSawyerのOSにROSを使ったAcademic版を作って、ロボットのインテリジェンスの研究をさせている。ROS上に蓄積された数多くのアプリケーションソフトウェア財産を巧みに使って、従来の産業用ロボットにはなかった新しい機能を見せてくれることを期待している。


 

 驚いたことに、Googleのロボット・チームのリーダであり、さらにFoxconnとGoogleの共同開発の推進者の、肝心のRubin氏が、2014年10月にGoogleを辞めてしまった。シリコンバレーであたらしい仕事(ハードウェアの開発も含む)を立ち上げるインキュベーターの役割をしたいらしい。

 Googleのロボットチームの次のリーダはカーネギーメロン大学のKuffner教授で、ロボット運動学の分野での専門家であり、Googleのロボットプロジェクトは問題ないと思われる。(追記、注1参照)

 そこで、Foxconnとの共同開発の仕事は、Rubin氏が新しくインキュベータとしての仕事としてやるようだ(出典:The Wall Streat Journal 2015 ,April 6 "Android Creator Andy Rubin Launching Playground Global")。

 Foxconn以外にもGoogleやHP(ヒューレット・パッカード)その他の会社も新しい組織への出資者となる。

 これは、私(このWebページの編集者)の意見になるが、Rubin氏は新しい仕事「賢く安全なロボットの開発」を機動力ある小さな組織で、クラウドなどの技術を取り入れて、ロボットオペレーティングシステム(ROS)、ロボットハードウェアも含めて速く立ち上げたいのだと思う。バックには、このような産業用ロボットの必要に迫られているFoxconnという巨大ユーザがいる。完成品はFoxconnが大量に使う(30万台のオーダ)し、成功すればユーザはFoxconnに限らない。HPはグローバルに製品を販売することになる(Rubin氏の言葉)。

 技術者のRubin氏は21世紀でまたとない技術開発のチャンスに取り組めると考えているのだと思う。

 注1:2016.01 Kuffner氏はその後、2016年1月にシリコンバレーに設立された"トヨタリサーチインスティテュートInc."に転籍してしまった。代わりにノキア出身のハンス・ピータ・ブロンドモ氏がロボット部門のリーダとして雇われた。

 注2:2017.06.13 アンディ・ルービンの野心はロボットでなく、次世代スマホであった。Essential Products会社を立ち上げて 、オープンプラットフォームの開発と配布を通して、これからオンラインに繋がろうとしている数十億台の電話、時計、電球、オーヴントースターを動かそうとしている。

 Foxconnはここ数年、内製のロボットであるFoxbots 10,000台をiPhone6sの生産ラインに投入しようと努力してきたが、単純な繰り返し作業はできても、少し難度の高い作業が出来ずに自動化が進まず困っている。

 そこで、2014年4月の時点で、FoxconnのCEOのGou氏はTaipi(台湾)で、Googleのロボット関連プロジェクトを率いるAndy Rubin氏(Android OSの育ての親)と「賢く安全な産業用ロボット開発」で共同することで話し合い、合意したようだ(出典;International Buisiness Times,February 11,2014 "Google Robots Could Automate Manufacturing At Foxconn, Andy Rubin In Talks")。

 Gou氏は工場の自動化レベルを高めることで、EMSの中でも雇用者一人当たりの売り上げが最も低い状態を変えたいと期待していた。また、Gou氏は自分の会社を自動車や医療産業のように、利潤の大きい産業に変えてゆきたいと思っている。

 Rubin氏はGoogleで多分野にわたるロボット関係の会社を吸収していたが、最初に実用化する分野として、スマートフォンの組み立てのような産業分野を選び、スマートフォン用OS(Andoroid)を開発して成功したように、ロボット用のOSを開発して、ロボット分野でリーダシップを握りたいと考えていた。

 これに対して、Gou氏は自分の会社の生産ラインを、Googleが開発するロボットの最適な試験場として使うことが出来ると述べた。工場労働者をロボットに置き換えることは、これからの技術業界の中でも大きなことであり、マイクロソフトやアマゾンも産業用ロボットの場で次の発展を狙っている。

 GoogleとFoxconnの二つの巨大企業が産業用ロボットでの共同開発を進めることになると、他のロボットメーカーにとっては相当の脅威になるのではないか?Googleの人工知能の研究能力やコンピュータOSの開発能力があれば、産業用ロボットの知能化(賢い産業用ロボット)にあたらしい展開が起こると思われる。

 これとは別にFoxconnはアメリカで研究開発に関して投資する対象を探している。いままでもペンシルベニアの研究機関に40億円を投資している。また、最新の生産、自動化技術を学ばせるために、社員をMITに送っている。やる気十分である。

 日本は産業用ロボットを利用する分野で、現場と密着した開発を進めてきて、この分野では現在では世界トップクラスといってよいと思うが、今後は知能化産業用ロボットの分野を積極的、しかもスピーディーに攻めないと、Google Foxconnコンビにやられてしまうかもしれない。スマートフォンなどの電子機器の生産ラインの全ロボット化などは、日本が最初に成功してほしいものである。

 スイスのABB社が長期間かけて開発してきた、小型双腕ロボットYuMiは、まさにスマートフォンなどの電子機器の組み立てを目指したロボットである。だから、Foxconnが取り組んでいるiPhone6sの組み立てラインは、まさに使ってもらいたい絶好のラインであるはずである。
 FoxconnとABB社は2011年ころから、YuMiに関して接触を続けている(出典;Complete Report,Nov 6,2011: Foxconn moves one step closer to build "Intelligent Robot Kingdom"-A Complete Report )。YuMiは2011年ころはFRIDAと呼ばれていたが、当時すでに、FRIDAは色々なワークステーション(ABBの現場)で作業テストをしており、Foxconnでも色々な作業で使って評価がなされたはずである。その後、実際のラインでどの程度使われているかに関しては、情報がない。使っていないのではないか?

 一つ気になるのはYuMiは作業者と協調して作業をするように設計されている点である。だから、完全ロボット化を狙うFoxconn のCEOであるGOU氏には、大量に使う気がないかもしれない。

 それよりも、YuMiを何十万台もiPhone6sの生産ラインで使うとなると、生産システムを構成する上で、大きなブラックボックスが出来ることになり、Gou氏はそれを避けたいのかもしれない。やはり、重要な要素である生産ロボットは自分で作りたいに違いない。

 Foxconn は昨年くらいから10,000台の産業用ロボット(内製ロボットのFoxbots)をiPhone6sの生産ラインに導入中である。その目的は作業員の作業環境の改善や、一層の生産増強である。しかし、Foxbotsは製造ラインの最終ステージの作業者の仕事をロボットで置き換えることが、まだ出来ておらず、全ロボット化の作業は遅れている。
 Foxbotsは単純な繰り返し作業は容易にこなすが、作業者が持っている知的な認識能力を持っていないので、品質の制御やラインの最終ステージでの美的品質を保証する作業の能力は、作業者に遠く及ばない。しかし、知的認識の技術の進歩は早いので、遠くない将来にロボット化が可能になるだろう。

  したがって、しばらくは、製造ラインの中で、ロボット化が困難なステージには作業者が残り、完全自動化できているステージと混在したライン構成で進める、というのが現場の担当者の見解である。(出典;Neowin, Sep 10, 2015 :"Foxconn can't fully automate its factories yet,says humans are still important")。

 上記は、ロボット化を進める上で当然予想される結果であり、日本でも、たとえば富士通周辺機器(株)ではタブレット組み付けの自動化をこのような進め方で行っている。ロボットでは難しい工程や人間による官能評価が必要な最終組立工程には作業者が入り、完全自動化はまだ出来ていない。如何に全自動化に近づけるか?が今後の競争点となる。

 それ以外に重要なポイントは、生産管理上の問題であり、ラインに流す製品の変種変量生産に如何に対応したラインを作るかである。スマートフォンのような変種変量生産をロボット化するには、相当な努力と工夫が必要になるはずである。

 FoxconnのCEOのGOU氏が希望する、100万台のロボット導入は、その意気には敬服するが、そんなに簡単にロボット化が出来るわけがない。相当な時間が必要であろう。しかし、彼には大量生産の現場を持っている強みがあり、継続的な努力は新しい技術を生むはずである。GOU氏は新しいロボット関連技術を生み出す、良い環境の中におかれていると考えられる。日本もロボット技術で遅れをとらないためにも、電子、電気機械の国内ラインのロボット化に真剣に取り組まないと、中国に負けてしまうことにもなりかねない。ポイントはセンシング技術である。


 Foxconn(台湾)は世界最大のiPhoneのEMS(エレクトロニクス機器の製造受託サービス会社)であり、その最大の工場は中国にある。iPhoneの製造には、20万人を超える作業者が100本の生産ラインで1日24時間(3交代?)働いている。高騰する賃金のために利益が少なくなっており、会社のCEOのGOU氏は、3年後に生産ラインの70%を自動化する必要があると述べている(出典:Voice of America,2015.03.09)。Foxconnは10年ほど前からFoxbotというロボットの開発を始め、近年は米国ペンシルベニアに研究拠点を設けた。(生産技術やスマートフォンの研究にとどまらず、将来の無人運転自動車の研究も見据えているようだ)

 自動化を進める上での困難は、如何に生産変動のある多種のスマートフォンなどの電子・電機製品を安価に生産するかという点である。下の写真は現在すでにロボット化されているスマートフォン製造の工程のものと思われる(出典:Wn.com,Building work starts on first all-robot manufacturing plant in China's Dongguanのビデオから)。ロータリーテーブルの周りに4台の6軸垂直多間接型の小型ロボットが配置されている。ロボットの動きも大変にきびきびしている。ロボットの形態は三菱電機の小型ロボットに似ているが、内製ロボットだろうか?注目すべきは人がロボットの隣り近くで仕事をしている点であり、安全柵がない。人との衝突時の安全が考慮されたロボットと思われる。もし内製ロボットならば、ロボット技術の面でも相当のレベルに達していることになる。

Foxbotcell20150505South China Morning Post 2015-05-05.png

 20万人の作業者(3交代)のうちの70%といえば、4.7万台のロボットライン(100ラインとすれば、1ラインあたり470台)ということになり、このようなラインを構築するには高い技術が必要になろう。ロボット技術も相当進歩するであろう。

 Foxconnはロボットを(可能ならば?)すべて内製化して、技術の流出を防ぐ方針だから技術は外に漏れずに中にとどまる。このような大規模なロボットラインを持たない日本企業は技術面で差をつけられるであろう。電子機器、家電製品のほとんどを中国のEMSに頼っている日本は、何か対策を考えないとロボット後進国になってしまうだろう。

 このような生産自動化ラインが完成すれば、工場の立地点は中国に限らず、米国でも良いわけで、Foxconnが米国にスマートフォンの製造工場を作ることは大いにありうる話である。オバマ大統領が推進する生産工場を中国から国内に呼び戻す政策にも貢献する。米国ペンシルベニアに研究所を設置した意図も、その辺を考えてのことだろう。

 日本は中国のEMSに委託している電子・電機製品の多種混流生産ラインを日本に戻して、低価格で製品を作れるロボット化ラインの準備を早急に始めなければならないだろう。

 スイスのABB社製のYuMiロボットは小物組みつけ用(500g~1kg)の双腕型ロボットである。

ABBYuMi.jpg

YuMiの仕様
    

 

単位

 

質量

kg

38

可搬重量(短腕)

g

500

自由度

7

リーチ

mm

559

位置再現精度

±mm

0.02

最高速度

m/sec

1.5

安全基準

IP30

 



 ABB社はYuMiをスマートフォンの組み付け用などに使いたかったらしいが、双腕14自由度を平面組付けが多いように見えるスマートフォンなどに使うのは、非合理的かもしれない。
 片腕7自由度は障害物を避けるのには都合がよいので、カメラやその他、小型の家電製品など立体的な対象を組み付ける場合には、有効に使えると思う。また、双腕ならば治具なしで組み立てられる場合もある。

 だから、Foxconnがスマートフォンの組み立てにYuMiを使うだろうか?Faxconn社もロボットを自主開発している。しかし、3年後にiPhoneの製造ラインの70%を自動化するというGou CEOの希望を達成するには、YuMiを使う場合もあるかもしれない。

一方、価格は$40,000(500万円)であり、単腕アーム2本と考えれば1本当たり$20,000(250万円)となるが、単腕2本をそれぞれ別のプログラムで動かすことも出来るとしても、少し高い。 

 双腕とすることについては、過去色々な意見があり、実際に色々な双腕ロボットが発売されているが、あまり売れてはいないようである。

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 米国Rethink Robotics社も双腕型のCo-robotのBaxterを販売したが、現場からの声の大部分が単腕ロボットで十分間に合うというものだったので、Baxterの後継co-robotとして単腕型のSawyerを開発中である。

 双腕への反対意見は、両腕が必要な場合には、「単腕を2台使ったほうが合理的」というものである。
 ABB社は、まず自社の生産ラインでのYuMiの適用の成功例をユーザに見せる必要があろう。

 参考ビデオ

 1.YuMiによる組み立ての例1


 2.YuMiによる組み立ての例2


 3.YuMiによる組み立ての例3

    この映像を見ると、現在まだ人手に頼っている縫製作業の自動化がYuMiで

    できるのではないかと、想像される。


 4.YuMiの設計思想、仕様など



 

 いままで観てきた安全なco-robotや、柵で囲む必要のある従来型の高速組み付けロボットなどは今後どのようにスマートフォンやタブレットに代表される電子機器の自動化に関係してゆくだろうか?

 ポイントは変種変量の混流生産である(注1)。iPhoneなどのスマートフォンやiPadなどの電子機器は発売時には生産量が多いが、短期間(数ヶ月~1年)で生産量が落ちてゆく。また、複数種類の製品が同じラインで生産される。

 このような生産ラインをロボット化しようとすると、ことはそう簡単ではない。Foxconnもロボット化を試みているが、まだ一部にとどまっている。

 変種変量の混流生産のロボット化には例がある。iPhoneのような電子機器ではないが、デンソーが、カーエヤコンの組み付けラインをロボットによって約70%自動化した例がある。50種類の仕様の違うカーエヤコンを同じ生産ラインで、1ロット6台ぐらいで切り替えて生産している(月産、約45万台)。生産量の増加、減少には、関連するロボット台数(=セル台数)を増減して調整する循環型生産方式で対応している(写真、上、出典 日経テクノロジーonline 2012/03/21)。

カーエアコン組み立て用セルの例.jpg


 電子機器の組みつけにロボットなどを利用して自動化率約47%を実現した例として、富士通周辺機(株)のWindows搭載タブレットの組み付けラインがある。ヒートパイプ、ファン、スピーカー、バイブレータなどの組み付けや、タッチパネルの試験をロボットにやらせている。今後、更に自動化率を上げて67%まで持ってゆく予定とのこと(写真、下、出典 PC Watch 2014/07/9)。100%ロボット化に成功すれば中国での生産に頼ることはなくなるはず。

 上記の二つの例ではco-robotを使ってはいない。だから、このような従来型のロボットを使ってもiPhone6や6plusの自動化もある程度できると思われる。

  しかし、ロボットを柵で囲わなくても良い扱いやすいラインをco-robotを使って実現できれば、世界の賞賛をえられるだろう。iPhoneは小型のロボットで扱えるので、co-robot化は容易かもしれない。

 Foxconnは生産ラインの内容を外部に漏らさないように秘密にしているので、ロボット開発も自動化ラインの構成も自力でやるつもりであろう。はたして、生産ラインを中国に残したまま生産を続けられるように、自力で自動化をタイムリーに進めることが出来るかどうか?co-robotの採用に挑戦してはどうか?



タブレットへヒートパイプを組み付け.jpg



 注1:1980年代には多くの水平多関節型(スカラ型)ロボットを並べた家電製品の組付けラインが導入されたことがあった(例:ソニーの家電組み立てライン)が、結局は、それらの大部分が撤去されてしまった。理由は家電製品の短命化が進んだために、製品の切り替えにロボットラインが対応できなくなったことである。短期にかつ低コストで新製品の組み立てに対応できた作業者を中心とした「セル型生産システム」に取って代わられてしまった。

 まず現在のスマートフォンの製造ラインの現状を見てゆこう(写真はiPhone4sの組み付けライン、ラインの長さは148m、出典、iPhone Hacks,2012/05/26)。

 代表的な例として、iPhone6,6plusの場合はどのようであろうか?世界最大のiPhoneのEMS(エレクトロニクス機器の製造受託サービス会社)は台湾のFoxconnであり、その最大の工場は中国にある。

 iPhone6や6plusの販売開始時には24時間で400万台を超える注文があった。これに対応するために、Foxconnは1日当たり、iPhone6,6plusあわせて54万台を生産していると報告されている。20万人を超える作業者が100本の生産ラインで1日24時間(3交代?)働いているらしい。またiPhone1台当たり600人(注1)の人手が必要らしい。(出典 WSJ.D/Tech,2014/09/17,Foxconn Struggles....)

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 生産状況を以上の数字から概算すると、

  1ライン1シフトあたりの作業者の数は 200,000人/100ライン/3シフト=666人/ライン(注1:ほぼ600人)
  1ラインで8時間(1シフト)当たりの生産台数は 54*10000万台/100ライン/3シフト=1800台/1ライン/1シフト
   1台あたりの生産時間(タクトタイム)は  60*60*8/1800=16秒/タクト

 つまり、一つのラインで16秒ごとに1台のiPhone6,6plusが生産されることになる。1ライン600人ということは、組み立ての前工程と後工程に必要な人数を差し引いた残りの人員が、1つの組立工程を数人で分担して、一人あたりには16秒の数倍の時間で仕事をこなしているものと思われる。

 いずれにしても、このような単純作業を長時間することになり、労働賃金を上げても労働者がなかなか集まらなくなっているのが現状らしい。さらに労働者の賃上(現状は年率約10%で上昇している)の結果、中国でのiPhoneの生産は利益が少なくなっている。このため、Foxconnの経営者(Terry Gou CEO)は作業者をロボットに置き換えることを計画し、実際に、Foxcbotというロボットを開発し試験的に使ってみたようだ(写真、下、出典;INSIHGT CHINA クローズアップ2011/08/18)。


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 しかし、人間の作業は単純とはいえ相当知的な作業をしているのでロボット化はなかなか難しく、2011年の段階では「特定のキーをたたく作業を繰り返す」など、単純な作業に限って使われていたが、その後、ロボットの数を増やし続けているようだ。Terry Gou CEOは来年に30万台、3年以内に100万台のロボットを導入したいと話している(出典、INSIGHT CHINA 特集 2015/08/20)。

 スマートフォンやタブレットなどの電子機器の生産ラインは多種変量生産の典型的なラインであり、工程の数や作業内容は時間とともに大きく変化する。このような多種変量ラインに、来年に30万台、3年以内に100万台などという数のロボットの導入は到底不可能だろう。

 一方、ロボット化など生産の自動化が進まなければ、将来的には賃金の低い東南アジアへ生産の移管を考えなければいけないといわれているので、Terry Gou CEOはそれだけ切羽詰った状態に置かれているのであろう。


結論を先に述べれば、その高価な値段(1000万円強)を1/3以下に下げない限り、工場用としては多くは売れないだろう。

 co-robotとしての性能は市販されている他のどのco-robotよりも優れていると思うが(teaching systemの使いやすさは不明)、値段が他のco-robotの2倍から数倍もする。ドイツにおけるLWR(Light Weight Robot)の研究開始はドイツの研究機関のDLR(German Aerospace Center)で1995年(20年前)に始まり、現在の形に開発が進んだのは2006年(約10年前)である。10年もたって高価な値段が下がらないのは目標としている用途が工場用ではなくて、宇宙用とか検査試験用とか、医療用など、高価でも使ってもらえる用途を対象にしているからではないか?そのため、構造的に理想を追求しすぎているのではないか?

 人と協調して仕事のできるco-robotの条件として、可搬質量と比較して本体質量をできるだけ軽量(2~3倍)にして、動作中に人と接触しても人を傷つけることなく短時間で(数ms?)停止できること、できるだけ省スペースで小型であること、移動・設置が容易で新しい仕事を速やかに立ち上げられることなどであろうか?

 LWR(iiwa--intelligent industrial work assistant)はこれをめざして、各関節にトルクセンサを組み込んだ7軸ロボットとして開発された。特徴としては、

1)ペイロード/アーム総質量の比率をできるだけ大きくするために筺体をカーボンファイバー入りのプラスティックスとしている。

2)形状をすべて曲面として接触しても傷をつけないようにしている。

3)関節ごとにモジュラー化されたドライブシステムを持たせた。パワーエレクトロニクスボード、デジタルエレクトロニクスボード、モータ、ブレーキ、モータ回転角度センサ、ハーモニック減速機、リンク回転角センサ、リンクトルクセンサなどがモジュラー化されている。ドライブシステムの中心部にはホール(穴)があり、パワーケーブル、エレクトロニクス通信用の光ケーブル、非常ブレーキ通信ケーブルなどが通っている。

4)関節にトルクセンサを組み込んだことで、非常にスムースな力制御ができ、衝突時の反力も小さくできるし、アームを持ってするティーチングも非常にスムースである。

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 iiwaはその用途を工場用に限定せず、医療からホームロボットまで広く設定している。いままでに数百台は製造して、いろいろ用途で評価をしているが、工場用としてはなかなか広まらない。高価でも使ってもらえる用途をたくさん開拓して量産効果によって、価格を下げることを狙っているのだろうが、果たしてどこまで価格が下がるであろうか? Co- robot(Collaboration Robot) の主たる目的は、多種中少量生産の自動化であり、Rethink Robotics社のBrooks氏によれば、その価格は中小量生産企業の作業者の1年分の必要経費程度(200万円~300万円?)であろうとの見解がある。だとすれば、1/4~1/3に下げねばならないことになる。

 ここ1~2年の間に色々な新しい仕様の産業用ロボットが市場に発表されたが、その中でも従来にはなかった新しい市場を開拓したのはUniversal Robots社だと思う。ロボット自体を小型(スリム)軽量化し、衝突時の衝撃力を軽減して、安全柵をとりはずせたことで、工場設備の配置をいじらなくても、比較的簡単にロボットの追加設置ができるようになった。これで、それまでSME(Small and Midium sized Enterprises)において、自動化のネックになっていた作業を自動化することができるようになった。しかも、必要がなくなれば、簡単に他の用途に使いかえることができる。このような自動化の用途は特に中小企業(SME)では多く存在すると思われる。価格も比較的安い。Universal Robots社が後発であるにもかかわらず、販売台数を相当な勢いで増やしている理由はこの辺りにあると思う。

 川崎重工(株)からco-robot(製品名デュアロ)が発売された。双腕型co-robotはいろいろ発表されているが、発売されたのは、川田工業のNexstage,米国Rethink Robotics社のBaxter、安川電機のヒューマンアシスト、スイスのABB社のYuMiに継いで5種目である。

 特徴的なのは水平多関節型(スカラ型)を採用した点であり、co-robotとしての特性はすべて備えているようである。狙っている市場は、電子電気関連、自動車・食品関連も見込むが、主たる狙いは中小企業(中小量生産)での利用という新しい市場であり、その展開が期待される。co-robotとしては初めてのスカラ型双腕型であるが、垂直多関節型双腕co-robotとの競争力はどうであろうか?デュアロの価格は約280万円で、Baxter(垂直多関節型、片腕7軸)の価格の22万ドルとほぼ同じで、安価に設定してある。

 少し気になるのは、高速動作に特徴のあるスカラ型を、人と同程度の速度での仕事を期待されているco-robotとして仕上げた点である。現状の産業用ロボットが対応できていない残りの90%の作業の自動化を狙うco-robotとして、製品化するのは少し思想がずれているような気がする。単腕型の産業用ロボットの機構別の利用比率(Mizuho Industry Focus  Vol.150, 2014年3月28日)は垂直多関節型6割、直交型2割、水平多関節型(スカラ型)1割、その他1割とのデータがある。co-robotとして狙うべきは第一にはやはり垂直多関節ロボットではないのか?

 しかし、川崎重工は相当強気である。引き合いが非常に多く、年産5000台以上は十分狙えると主張している。私は実際に見たことはないが、スマートフォンなどの組み立てラインは比較的平面的な組み立てが多いと想像される。このような生産ラインに従事する作業者は、全世界で100万人規模で、組み立てラインなどは数千本もあるというデータもある。川崎重工の強気もわかる気がする。

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               川崎重工のスカラ型双腕co-robot 「デュアロ」、

                  可搬質量片腕2kg、4~6自由度

         日刊工業新聞のBusiness Line(6月4日)から引用

   

 2014年には中国が世界最大の産業用ロボットの需要国になると予想されるそうだ。中国製のロボットも次第に性能が向上しているようだ。今のところ、要素部品には日本製やドイツ製のものを使っているから即座に追い抜かれるとは思えないが、近い将来にはテレビなどと同様に追いつかれる可能性はある。低価格路線で来られたら日本の産業用ロボットメーカも苦境に陥る。
 対策として何が考えられるだろうか?

 ロボットメーカはロボットだけでなくシステム化の技術を磨く。
 商品の競争力で人件費がキーになれないような製造システムを開発しブラックボックス化する。
 徹底的に機械化した商品別、部品別の製造システムを開発し、商品、部品の価格、品質、性能で引き離す。

 これを実現させるためのツールとして、CADベースのロボットオフラインシミュレータの高度化が必要であろう。そのようなシミュレータの例として東京大学発のベンチャー、MUJINが開発した「MUJINコントローラ」も面白そうだ。  

 パラレルリンク機構を使った天吊型の小物組み立て用の6軸ロボットがパナソニックから発表された(2010年10月)。部品組み付け時の接触力を従来型ロボットより高速で制御できそうだ。ロボットによる小物組みつけの分野で新たなブレークスルーを作った製品と言えるのではないか?


 6個のモータは天井に固定してあるので、手先にかかる重量はリンク構造と手先に固定したツールだけになる。ダイレクトドライブモータ(パナソニックの場合、ダイレクトドライブかどうかは不明)を採用すれば、駆動系の摩擦抵抗が少ないのでバックドライバビリティーも良く、モータ電流を制御するだけで、特別の力・トルクセンサーを手先に用意しなくても手先が部品などと接触するときの接触力を安定かつ高速に制御できると思われる。

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パナソニックは実際に電子基盤をコネクタに嵌め込む作業やカメラの鏡胴を組み付ける精密作業などができることを確かめた。パラレルリンク型ロボットはアームの慣性負荷が各モータに分散されるので、高加減速度が可能であり、歯車機構を持たないので位置精度も優れており、手先の剛性も大きく、組み立て作業に向いている。


 動作範囲が狭い、姿勢変化の範囲が狭いなどの問題点もあり、すべての小物組みつけ対象に有用とは限らないが、電子機器部品などの組み立てには今後広く使われてゆくのではないか?生産準備時間を大幅に短縮できれば、組立作業へのロボットの適用を妨げていたことが解消されたことになる。将来の展開が楽しみである。


パナソニックはこのロボットの最大の特徴を、軽量な操作感で手づたえ教示ができる点だと主張している。サーボとブレーキを解除して、アームをフリー状態にすると、軽量な操作感でロボットの手先を人手で掴んで誘導でき、動作を手づたえ教示できる。従来型のシリアルリンク型ロボットだとモータ重量が手先にかかってくるので、このような軽量な操作感は得られないとのこと。教示の際にはサーボが解除されているので暴走の危険が無いのも大きなメリットとなる。
 また、 ロボットの手首を持って実際に作業を教示するだけで自動的に作業プログラムができるようなソフトウェアを用意して、教示時間を従来より大幅に短縮できたようだ。操作には高度な知識などは不要で、現場の作業者でも教示ができるそうだ。


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 SME(Small and Medium-sized Enterprises)用ロボットの開発目標は中小量生産向けで、生産を短時間で立ち上げられるロボットシステムの開発である。LWRが何故そのシステムに有用なのか、開発者の主張点をまとめてみる。
 LWRでは、その関節にトルクセンサを組み込んであるのでアームのどの部分を触ってもアームを動かすことができる。オペレータはロボットに装着したツールを掴んで作業順序にそってツールを案内(=Lead-Through )できるので作業教示が短時間でできる。Lead-Through Programming では教示をするオペレータと教示されるロボットが同じ領域に存在することになるので、オペレータの安全保証が必要になる。そこで、アームのどの部分を触ってもアームを動かせる特性(Sensibility along the entire arm structure)がオペレータの安全確保に役立つ。

 以上がSME用ロボットにLWRを使う理由の大部分であると思われる。関節トルクセンサを組み込むことでロボットが高価になっても、生産を短時間で立ち上げられるというメリットの方が大きいと開発者が判断したものと思われる。

 LWRは最初は人とロボットが一緒に働くサービスロボットを目標として開発されたらしい。しかし、サービスロボットの利用市場がまだ未成熟なため、ニーズが多くない。そこで、SME用のロボットとして使うことを先行するニーズとして捉えて、利用方法を考えているように思われる。はたして、SMEにLWRのニーズはあるだろうか?今後、注目してゆきたい。

 LWRは従来型の産業用ロボットを導入してもペイできない分野で使うことを目標とした。つまり、生産の立ち上げがより短時間で行えるようにして、生産のタイミングを逃さず、少量生産でもペイできるロボットにする。周辺設備を極力少なくして、設備にお金をかけなくて済むようなロボットにする。そのためには、ロボットは従来型よりも多少は高価であっても良い。
 この分野で需要が出てくれば、LWRの生産量が増えて価格も下がり、次には量産ラインでも使えるようになるという開発戦略ではないか?
 一方、関節トルクセンサーではなく、手先に力-トルクセンサを装着した(ファナックが商品化したような)ロボットで同様な効果が得られるならば、こちらの方がロボットの価格は安いだろうから、LWRが勝てるとは限らない。
 LWRが勝てるとすれば、インピーダンス制御による接触作業が数倍の高速でできるとか、ロボットを関節単位で手で動かせるという能力が生産の立ち上げの短時間化に効果的であるとか、作業者とロボットが作業領域を共有・協調して作業できるとか、であろうか?


 EUが新世代産業用ロボットの研究プロジェクトを継続し成果をあげているようだ。先日ドイツのミュンヘンで開催されたAutomatica 2008に出展した内容とその関連技術がWebサイトに詳しく発表されているのを見つけた。以前筆者も研究したことがある関節トルク制御方式のロボットアームが要素技術の一つとして使われているのを知って興奮を覚えた。 翻って日本はどうか?サービスロボットに開発資源を集中投入して、産業用は企業に任されている感じがする。少し心配である。
 EUは新世代産業用ロボットに開発資源を注入しており、大量生産ライン用であったロボットを中小企業(SME:Small and Medium-sized Enterprises)が使うのに適したものにする研究を熱心に行なっている。 SMEロボットの開発のターゲット、シナリオが短いビデオにまとめられている。(しかし、これは目標(期待)であって、その技術がすべて完成したということでもないようであるが。) 

 SMEロボット技術は生産量の少ない仕事にも、産業用ロボットが効果的に使えるようにする技術である。それは上記のビデオを見れば理解しやすい。例えば、ロボット教示が簡単で直感的にできる。ロボットのプログラミング言語を学ぶ代わりに、オペレータはロボットに装着したツールを掴んで作業順序にそってツールを案内(Lead -through)し、ロボットがすべき作業を「Speech」または「グラフィックユーザインターフェース」で与える。このため、人と同じ作業領域で、協調して働ける(教示作業など)安全ロボットを開発する。
 これにより、素人でも簡単に教示でき、すばやく仕事が開始できる。設備構築から生産開始までの準備時間が3日以内に終わるようなシステムの開発を目指す。
 従来の産業用ロボットが不得意とするこのような特性がもし可能になれば、産業用ロボットが新しい発展を始めるだろう。

 教示時間を短縮する技術の例としては、
 1) ロボットの関節にトルクセンサを組み込んだ安全ロボットを開発することによって、ロボットの手またはツールを人間が持って案内(Lead-through)できるようにする。
 2) 3次元視覚センサを使った物体認識により、ビンピッキングなどができ、部品供給装置が簡単(または不要)にできる。また、関節に組み込んだトルクセンサを使った接触探り動作プログラムにより、組み付け(嵌め合いなど)の教示などが簡単にできる。
 3) 部品のCADデータを用意することで、例えばバリ取り作業のために作業点上の数点を代表点として教示すると、軌跡が自動生成され、直ちにバリ取り作業を開始できる。

 などがある。特に、ドイツ航空宇宙研究所(DLR)で開発された関節にトルクセンサを組み込んだ軽量小型7軸ロボット(LWR: Light-weight robot)は、その価格を別にすれば上記のSMEロボットの目標仕様に沿ったものであり、将来その低価格化が期待される。

  写真:"DLR light-weight robot" by German Aeropspace Center、IEEE Robotics and Automation Magazine ,June 2004,pp.12-21から引用

 その外にも、Worker's third hand(作業者の第三の手)、Five minute robot programming、Plug-and-produceなどの概念に沿った色々な技術が発表されている。このうちPlug-and-produceとは、個別のツールやセンサをロボットに取り付ける(Plug)と、ロボットコントローラがその仕様を判断して、ロボットが直ぐに作業に取り掛かれるようにコントローラを自動的にビルド(再構築、produce)する仕組みである。これは日本の企業でも既に実施している例がある(Plug and play)。
 現状の産業用ロボットの利用がなかなか広がらないのは、プログラミングなどの生産準備に時間がかかり過ぎ、生産を短期間で立ち上げるのが難しい、生産の切り替えに時間がかかるなどが主な原因だけに、EUの取り組みは的を獲ている。特に、素人でも作業の教示が簡単にできる(究極的にはプログラミングレスできる)ようにするアプローチは筆者には新鮮であった(筆者はCGデータをベースにしたオフラインプログラミングで問題が解決できるのではないかと考えていた)。 しかし、SMEロボットがこの大問題を既に解決したとは言えず、未解決な問題が多く残っており、今後の長期の取り組みが必要とされるはずである。

 関節トルクフィードバック方式のアームの制御方式は、先回述べた3本指汎用ハンドの制御方式と同じである。3本指汎用ハンドでは一つの作業対象物体に3本の指が協調して接触し、安定に把持をする。接触時の接触力やバネ特性(コンプライアンス)を制御しているのに、実験では把持動作の動的な安定性はすばらしいものであった。つまり、接触から把持までの作業時間が数10msecというように非常に短いにも関らず、十分に安定に動作してくれるのである。このことから、物体との接触作業を目的とする場合には、関節トルクフィードバック方式は大変有効であるという認識を持った。
 現在、いわゆる力を制御するロボットアームはアームの手先に取り付けた力センサで反力を検地してフィードバックし、力やコンプライアンスを制御するのが主流であるが、接触作業の高速化や複数アームの協調作業に対しては、関節トルクフィードバック方式も大きな可能性を持っていると考えられる。剛体接触を伴う作業の制御安定性は関節トルクフィードバック方式がはるかに優れている(参照:"Development of a Fast Assembly Robot Arm with Joint Torque Sensory Feedback Control"、Proc. of the IEEE International Conference on Robotics and Automation 1995 ,pp.2230-2235)。もっと、開発研究を進めるべきではないのか? 
 また、関節トルクフィードバック方式は安全性の面からも有効である。関節トルクフィードバック方式では、アームのどの部分が人間に接触しても感知して停止するまたは回避することが可能である。手先センサ方式ではそうは行かない。また、最近、トヨタや日産がラインに導入しているダッシュボードユニット・ローディング用のバランシングアームのような仕事をさせることも可能はずである。
 アーム関節トルクフィードバック方式は現在の産業用ロボットの構造には直ぐに応用することができず、構造の大幅な変更を余儀なくされる欠点はあるが、日本でも、もっと研究されてしかるべきだと思う。

 機械組み立てには力サーボは必ずしも必要ではなく、位置制御ロボットに力センサを持たせて、接触時の反力をモニタしながら、閾値に達したら移動を止めるというやり方でよい場合もある。力センサを使わなくてもモータの駆動電流をモニタしながらやる場合もある。組み立て自動化の現場では、現実にはこのやり方が多く使われている。しかし、探り動作が必要なので、作業速度が遅くなる可能性はある。

 物体との接触力を制御する制御方式に関しては、だいぶ古くなるが、1991IEEE International Conference on Robotics and Automationで配布されたVideo Proceedingsに性能比較映像が載っている。Case Western Reserve Universityが「Recent Research in Impedance Control」と題して具体的に色々な方式のメカニズムとセンサをつかって実験によって力制御の性能比較をしている。このうち下記の1)、3)はアームのどこを押してもアームが動くのに対して、2)は手首に装着してある力センサより先を押せばアームは動くが、それ以外のアームを押しても動かない。アームが人を押しつぶすというような危険性が無いだけ安全性は1)、3)が高いといえる。

1)Simple stiffness control without force sencing
(米)Adept Inc.のダイレクトモータ駆動の水平多関節型ロボットを使用)
 ダイレクトモータ駆動のため力センサは不要である。減速機を使わないので、関節に摩擦トルクの外乱が少なく(関節軸受けの摩擦トルクはある)、関節の機械剛性も高く、関節のStiffness(剛性)制御(注1)が安定している。制御の動特性が高いので外部の物体(剛体)に比較的高速で接触(衝突)しても安定して接触が続けられる。ただし、衝突時にアームの慣性力がショックとして発生する。また、モータが大型、かつ重いので垂直多関節型のロボットに適用するのは実用的ではない。

注1:Compliance(やわらかさ)制御とも言う。

写真: 1991IEEE International Conference on Robotics and Automationで配布されたVideo Proceedingsから引用させていただいた。アームを手で押し引きするとバネのような反力が得られる(写真左)。カーブ状に切った板(木製?)に接触(衝突)後、カーブに沿って滑らかに移動できる(写真右)。


2)Feedback from wrist force sensor
  GEP50ロボット(日立製のプロセスロボット(垂直多関節型)のOEM?)を使用している。ダイレクトモータ駆動ではなく、減速機を使っているので、摩擦トルクが存在し、電流制御だけでは関節のトルク制御が出来ない。そこで、手先に6軸力センサを装着し、接触反力をフィードバックして接触力制御(正確にはインピーダンス制御)をしている。センサとモータの間に複数の関節、減速機が存在するので、それらの摩擦特性や低機械剛性のためにモータとセンサ間の固有振動数は低くなり、制御の動特性は低くなりがちである。制御の応答性を高めようとしてフィードバックゲインを高めると、剛体との接触時に自励振動が発生してしまう。実験では遠隔操作(エミュレーション)で機械部品の組み立てを成功させているが、安定した動作ができる手首負荷慣性の範囲が狭いと報告している。長所は手先センサを用意するだけでよいので、構造が簡単で製造コストが安いことであろう。力制御やインピーダンス制御の殆どの研究例がこの方式を採用している。

写真: 1991IEEE International Conference on Robotics and Automationで配布されたVideo Proceedingsから引用させていただいた。手先に持った部品を指で押すとバネのような反力が得られる(写真左)。断面が△形の部品のオスガイドをY形部品のメスガイドに滑らせながら挿入しているが、動きが少し振動的になっている(写真右)。

3)Senced torque feedback
  (米)Robotic Research 社の7軸垂直多関節型ロボットを使用
  2)の例の様に手先から力トルクをフィードバックするのではなくて、各関節のトルクをフィードバックして減速機に存在する摩擦トルクを減らす方式を採用している。これにより、間接的にダイレクトドライブ方式が実現できる。Robotic Research 社のロボットは関節の減速機にハーモニックドライブを採用してコンパクトなスタイルを実現している。ビデオによれば安定した剛体接触(衝突)動作が可能であり、外部環境へスムースに倣い動作している(注2)。ハーモニックドライブは100対1前後の高減速比が1段で得られる軽量でユニークな減速機であるが、摩擦トルクが比較的大きくかつ機械剛性が低いので、どの程度の実用性能が得られたのか詳細は不明である。
 この方式は各関節にトルクセンサを組み込む必要があるのでアームコストが高くなる。しかし、モータとセンサを近くに配置できるので、トルクフィードバック系の機械剛性は上記2)の方式よりも大きくでき固有振動数も上げやすくなり、トルク制御の動特性は高くできる。したがって、アーム先端が環境物体に接触するときの制御の安定性は高くできる。一方、力センサがツール端にないので関節の軸受けに発生する始動摩擦トルクなどが原因となり、接触力の制御精度は若干低くなる。

注2:アームの評価を行ったCase Western Reserve Universityの研究者によれば、接触時の安定性は「驚くべきもの」であったとのことである。

写真: 1991IEEE International Conference on Robotics and Automationで配布されたVideo Proceedingsから引用させていただいた。アームを手で押し引きするとバネのような反力が得られる(写真左)。アーム先端に持たせた電球を平面に倣わせてスライドさせている(写真右)。アーム先端でなく、どの軸を押し引きしてもアームを動かすことができる(写真では7軸のうちの第5軸を掴んで操作している)。

 11月8日の日経産業新聞にファナックの稲葉社長へのインタビュー記事があった。新しいロボットのアプリケーションとして「ワーク(加工物)の自動供給などで工作機械を24時間稼動するシステム」をアッピールしていた。「(知能化した機能によって)ロボットを使ったことにない顧客に、搬送装置などの周辺機械がなくても導入可能。日本で稼働中のNC工作機械は50万ー60万台あり、各機械に一台ずつロボットを組み込めば膨大な市場になる。もっとも力を入れるべき分野だ」というわけだ。
 ここでの「知能化した機能」とは「通い箱中に適当に並べられたワークを、3次元視覚装置でその位置と姿勢を認識して正しく掴む」機能とか、「ワークを工作機械へ装着する際に必要なロボットアームの力制御またはコンプライアンス制御などができる」とか言うものであろう。
 筆者の興味は、特に力制御またはコンプライアンス制御がどの程度の性能に仕上がっているのかということである。自動車部品組み立てラインでの組立作業のようなのような速い作速度を要求される用途で使えるレベルに仕上がっているのだろうか?

 トヨタ自動車がロボット開発部をつくり、色々な用途のロボットの試作を始めていることが新聞などで報道されている。2006年1月4日の日経産業新聞によれば、その開発戦略は「人のそばにいて助けてくれる知能機械、パートナーロボット」の開発であり、また「道具を使えるロボット」の開発といわれる。
 ここで「道具を使えるロボット」というのはなかなか重要なことを言っていると思う。人間は道具を使う動物であり、それによって今日の繁栄を獲得してきた。ロボットが道具を使えれば、例えば重くて大きな物体を扱う場合、今までのように人間が接近するのが危険な大型のロボットを使う必要は無くなる。今まで人間が扱ってきたクレーンやバランサーなどの道具をロボットが使えれば、ロボット自身は人間のように小型で非力なもので十分ということになる。小型で非力なロボットならば、人間のそばにいても怖くは無いわけである。怖くなくて安全ならばもっとロボットを使おうという場面が増えてくるだろう。しかし、普通に考えるとこれは中々難しそうだ。どのようなアイディアを見せてくれるだろうか楽しみである。

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 日本機械工業連合会と日本ロボット工業会が作成した「平成12年度 21世紀におけるロボット社会創造のための技術戦略調査報告書(要約版)」では、ロボット技術に対する産業界の閉塞感について触れている。サービスロボットなどが社会的にブームになっている反面、市場展開が進まない点を指摘している。しかし、それは産業界だけではなく、研究者の間にもあるのではないか。現在のサービスロボット研究だけでなく産業用ロボット研究についてもいえる。
 かって産業用ロボットが工場に入っていったとき、アカデミックの研究成果がどれほど取り入れられたであろうか?莫大な量の研究論文が日本に限らず、世界的に作られたにもかかわらず、現実の工場でそれらの成果が使われているのは下表にも示されているようにまだわずかである。
 日本の産業用ロボットが世界的に見ても高度な性能を維持できた大きな要因は、ロボット研究の知能化を目指した研究よりも、現代制御理論をアームの運動制御やモータのベクトル制御に適用したアカデミックの研究であったと思う。
 一方、その他の多くの研究成果は利用されずに棚に眠っている状況である。何故、こんなことが起こっているのであろうか?私は、サービスロボットはもちろんのこと、産業用ロボットでも過去の研究成果をもっと利用して発展させる余地が大きいと思っている。これについては今後個別に分析検討してみたい。

表:平成12年度 21世紀におけるロボット社会創造のための技術戦略調査報告書(要約版)から引用

 現在の産業用ロボットでは難しい組立て作業の例としてしばしば挙げられるのは、変形しやすく正確に掴みにくい対象物の扱いである。たとえば、ワイヤーハーネスとかゴムパイプなどがある。このために、ロボットにはやわらかいものを掴めるハンドだとか、それらの部品の変形を認識・計測できる視覚機能をの開発が必要だという結論になりがちである。このような前提に立つと、それらの機能ができるまでは機械組み立ての自動化は困難になってしまう(注1)。
 実際の現場では現在の産業用ロボットで自動化できる作業と困難な作業を切り分けて、自動化できない作業はまとめて人間の作業者が組み立てるライン構成にする。つまり、ロボット化組立てラインと作業者用組立てラインとを適切に分離することでロボット化を進めている。 ロボットが組み立てる部分、人が組み立てる部分などをそれぞれが組み立て易いように考慮して製品設計することが成功のキーになる。

 注1:力覚や3次元視覚を持ち、色々な形状を持つ部品を正確に把持できるロボットは現状では高価格で、作業速度が遅く、かつ信頼性に欠けることが問題である。組立て作業のような作業付加価値が低く、数秒単位のすばやい作業を要求される現場ではなかなかペイできない設備となってしまう。しかし、作業速度が比較的遅くてもよい作業などには、ファナックなどで導入が始まっている。

 組み立てたい製品のCADデータから組み立て用ロボットの動作を発生させるシステムがあれば、ロボット組立てセルを短期間で立ち上げられる可能性が出てくる。
 製品のCADデータから組立て順序を自動生成する研究開発について米国の事情を調べてみた。米国では「Archimedes
(アルキメデス)」というAutomated Assembly Abalysis ソフトウェアの開発が進んでいるようだ。1995年頃に米国のサンディア国立研究所(場所:アルバカーキ)が機械部品の組立て手順を自動生成するソフトウェアArchimedes 2 の論文を発表しているのは知っていた。それから10年以上の継続的研究の結果、相当使えるレベルにまで来ているようだ。現在はArchimedes 4 か? 電子制御箱などの組立て手順の解析結果がアニメーションで紹介されている。
 Archimedesは無数に存在する組立て順序の中から、ユーザが与える制約条件を満足する組立て順序を提案する。フレキシブル治具を使ってワークを固定する方法も提案できる。さらにハンド、ツール、治具の形状、組立てステーションの形状などを考慮に入れてロボットの動作を計算させることができる。
 ただし、Archimedesのようなシステムが実際に効果を発揮できるためには、前提条件として、部品や生産設備、ツールなどがCADのサーフェスモデル(またはソリッドモデル)で用意されること、およびCADデータから作られた実要素部品の寸法が所定の精度内に管理されていること、が必要である。
 そのような生産準備基盤を確立するのは容易なことではない。しかし、得られる効果を考えれば、優先して開発に取り組むべきテーマであると思う。

 参考:サンディア国立研究所にはISRC(Intelligent Systems & Robotics Center)があり、そこで研究が行われている。米国では国立研究所が中心になって研究開発を実施し、途中から民間企業と共同開発を進め、民間企業から商品として発売されるという例は多いようだ。

 いよいよ今年の11月にPS3の発売が開始される。今日の朝日新聞朝刊でソニー・コンピュータエンターテインメント社の久多良木社長がPS3について語っていた。PS3は「ソニーグループどころか全産業界の命運を握っている。コンピュータ産業と家電産業、ゲーム産業はほとんど融合すると思う。PS3はそうした時代に家庭内で多様な機能を満たすコンピュータシステムとして、大きな可能性がある」そうだ。PS3はソニーが新開発したCellコンピュータで駆動されている。Cellコンピュータはマルチメディア時代の情報処理システムが必然的にリアルタイム分散処理になることを見越して開発されたマルチプロセッサによるリアルタイム並行処理システムと思われる。
 似たような狙い(?)で1980年代に旧インモス社(英国)で開発されたトランスピュータ(分散処理型コンピュータ、専用言語はOccam)がある。複数のプロセッサを高速通信回線で結んで、それらの並列処理でトータルとしての処理速度を高めようという狙いだったと記憶している。大いに期待されたが、そのうちに姿を消してしまった。その後の汎用マイクロプロセッサの演算速度の向上や価格低下が著しく、トランスピュータがそれらに追いつけなかったためと思われる。
 今回もまた、汎用のマイクロプロセッサの演算速度の向上の限界が予測される中で、ソニーが開発に踏み切ったわけである。今回はゲーム機という具体的な用途を明確した中での開発であり、ソニーでなければ出せないような高額な開発費を投入した中でのデビューである点がトランスピュータの場合と異なっている。SP3にもマイクロソフト社製のXboxという強敵がいる。Xboxは汎用コンピュータを使ったアーキテクチャでSP3に挑戦している。果たして、SP3という新しいアーキテクチャがマルチメディア処理用の主流として認知されるだろうか?それともPS3用の専用として留まるのか?
 筆者の希望としては、非常に重要な技術開発であるだけに、ソニーだけに任せずに、多くの企業・研究所が競争して取り組んでほしいと思う。いや取り組んでいるに違いない。
 たとえば、独立行政法人 産業技術研究所 デジタルヒューマン研究センターではヒューマノイドロボットのための実時間分散処理システムの高性能化に取り組んでいる。あたらしい実時間・並列処理アーキテクチャ基づくRMTP(Responsive Multi-Threaded Processor)にも注目したい。

 今まで紹介してきたロボット化組立てライン、ロボット化組立てセルはそれぞれの製品に対して利潤を生んでいるが、いかなる製品に対しても適用できるわけではない。現状では新しい製品の組立てラインを立ち上げるまでに、高度な能力を持った技術者が取り組んでも、生産準備に数ヶ月から1年程度の期間を必要とする。したがって、3から4ヶ月程度の短期で生産が終了するような製品や、いち早く生産を立ち上げる必要がある場合にはロボット化組立てライン(セル)は対応できない。情報家電のように、近年急激に生産完了期間が短縮(3から4ヶ月)されてきた製品には、組立て自動化ラインは廃止され人が組み立てるセル型生産システムに切り替わってしまった。しかし、人手を使った組立てでは、製品品質は下がらざるを得ない。このような生産形態に対応できる新しい技術開発が待たれる。
 米国でAgile Manufacturing(すばやい生産準備)という言葉が提唱され、それに対して色々な
プロトタイプが提案されてきたが、どの程度成功しているのだろうか?

 これは月産5万台以下の機械部品組立て用にデンソーが開発した全自動化組立てセルである。IDEC社の例のように多数のハンド(またはチャック)を持つ回転タレットをロボットに持たせて、一気に複数部品を組み付けるのではなく、製品循環システム(Work Circulation System)を使うことで、同じ部品の組み付けを製品1ロット分連続で行い、ハンド交換などのロスタイムをロット数分の1に短縮している。製品パレット群が複数回循環することで全部品の組みつけが完了する。このようにして従来、一人の作業者が組みつけていたものを全自動化した。1996年に小型船舶・農建機に用いられる小型ディーゼル用の噴射ポンプ(D型ポンプ、月産2.5万台)に適用し、生産性を3倍高めることができた。

 このセルの他の重要な特徴は、複数の部品を組立てロボットアームへ供給する自動保管棚(Warehouse)を備えていることである。保管棚に付属している自動取り出しアームが指定された部品を保管棚から取り出して、ロボットアームに供給する。狭い組立てステーションに多部品を供給するという問題が解決されている。

図、写真:Circular Asembly Cell(参照:"ミニ組立て工場-Circular Asembly Cell-" デンソーテクニカルレビュー Vol.9 No.1 2004)

 デンソーのカーエヤコン組み立てロボットラインのような多種大量生産ラインではなく、1から3台の小型ロボットを中心として構成される全自動「多種少量生産組み立てセル」で成功している例が、2006年4月14日の日経産業新聞に紹介されていた。IDEC社の「非常停止スイッチや制御用リレーなどの部品の組み立てセル」がそれである。2000年に稼動開始し、現在16セルが組み立てを行っている。5年間で累計1900万個の制御機器を製造した。今後2年以内にさらに100セルを導入する計画だそうだ。単純計算をすると1セル当たりの月産量は平均約2万台((注1)となり、全自動化設備としては生産量は少なく多種少量生産だが、製品生産寿命は長いと思われる。このような生産形態に対してはロボット化セル生産システムは有効であることが証明された。
 特徴は一度に多くの(最大20個?)部品をつかむことのできるハンドまたは"つめ"を持った回転型ハンドを搭載していることである。一度に多くの部品を把持し、一気に組み付ける。ハンド交換をなるべく少なくして交換のために発生するロスタイムを減らした。また、部品搬送用の部品供給モジュール、組み立て途中の製品を保持する治具モジュールなどを標準化している。各モジュールは順次最新のものに入れ替えて、1時間当たりの生産台数は当初に比べ、約2倍することができた。モジュールを交換すれば、生産切り替えにも短時間(10~30分)で対応できる。

写真:IDEC社の組み立てセル(日経Tech-On(Webページ、2005年11月17日)から引用させていただいた) 


注1:手組みか自動化かを決める限界月産量は、製品の構造によっても変わると思うが、デンソーの場合月産5万台が目安になっている。IDEC社のロボット化セル生産システム場合はこの半分以下でも成功していることになる。デンソーでもロボット化セル生産システム("ミニ組立工場CAC-Circular Asembly Cell" デンソーテクニカルレビューVol.9 No.1 2004)は開発・運用されているが、月産量については不明である。


 ある程度の生産量が保証されるならば、汎用ロボットを使った組み立てラインは人間による組み立てラインよりも多くの利潤を生むことができる。このような分野では汎用ロボットの競争相手は人間ではない。むしろ、汎用ロボットを使わない専用組み立て機械が競争相手であろう。たとえば、電子部品のインサータ(チップマウンター)などは、汎用ロボットを使わずに、専用の組み立てモジュールとして設計されている(注1)。このような専用設備が自動車部品組み立てに対しても低価格、高速組み立てを実現できれば、手ごわい競争相手になるかもしれない。
 汎用ロボットを使った設備の強みは何であろうか?やはり、生産変動へ対応するフレキシビリティであろうか。今後、汎用ロボットを使った組み立てラインがどのように進化してゆくか、大変に興味深い。

注1:ロボット工業会はインサータをロボットとして分類している。

写真:日立ハイテク製の高速チップマウンター
(日立ハイテク社のホームページから引用)

 ロボットによる組み立ては、ロボットアームが周辺設備と協調することで初めて可能になる。組み立ての能力を高めるにはロボットアームと周辺設備から成るセル(組立てロボットモジュール)の能力を高める必要がある。ロボット能力が十分に高ければ周辺設備は簡単で済むが、ロボット能力が低い現状では周辺設備で補うしかない。現状では、この周辺設備の価格がロボットの価格の数倍もかかるから、ロボットを高機能化して周辺設備を簡単化したいところだが、これがなかなか難しい。だから組み立てやすい製品形状に設計したり、周辺設備をモジュール化、標準化し、再利用を可能にするなどして設備コストを下げているのが現状であろう。

図:デンソーウェーブ(株)が説明するセル(組み立てモジュール)
  セルを複数台結合すると組み立てラインができる。

 自動車部品製造では過去20年以上ロボットによる組み立ての自動化を研究、実施してきている。製品寿命が比較的長いので、家電製品の最終組み立てラインのように撤去されてしまうことは無かった。
 カーエヤコンのロボット化組み立てラインに関してはデンソー(西尾工場)の例がある。このようなロボット化ラインが運用を継続できたのは、今までの経営環境の中でそれなりの存在価値を創造してきたためであろう。作業者では対応できないような多種、高頻度品番切換生産(生産の平準化対応)のもとで製品の品質保証を実現する。生産しながら新しい品番製品の投入や旧製品の削減の準備ができ、製品のライフサイクルに応じて、設備の生産能力を変更ができる。などの工夫がなされている。

写真:デンソー西尾工場のエヤコン組み立てロボットライン
(日経ビジネス2006.2.27から引用させていただきました)

  デンソーの場合、ラインはセルと呼ばれる組立てモジュールを複数台連結した構成になっており、一つのセルで複数部品が組みつけられる。セルはロボットや搬送装置、部品供給装置、PLCなどから構成されるモジュールで、ラインの生産量に応じてセルを追加、削除して生産量を調整できる。セルの追加または削除に応じて各セルで組立てられる部品数は減増される。

 スポット溶接、アーク溶接、塗装、ロードアンロード分野などへのロボット応用は自動車製造業を中心として進んだが、最も多く作業者が働いている組み立て分野への応用は、大きな期待(注1)に関らず進展は遅い。1980年代には家電製品の最終組付けラインへ多くの水平多関節型(スカラ型)ロボットが導入されたことがあったが、最近ではそれらの大部分が撤去されたと言われている。理由は家電製品の短命化が進んだために、製品の切り替えにロボットラインが対応できなくなったことである。短期にかつ低コストで新製品の組み立てに対応できた作業者を中心とした「セル型生産システム」に取って代わられてしまった。
 自動車製造工場でも1980年代後半に、最終組付けラインへロボットを導入しようといろいろ実験されたが、ロボットによる機械組み立て技術が未熟で、変種変量生産に対応できず、多くは撤去を余儀なくされている。

写真:ソニーでのロボットによる家電組み立てライン


写真:手作業が中心のセル型生産方式

注1:
 (米)スタンフォード大学コンピュータサイエンス学部では、1970年代に人工知能の研究の一環としてロボットによる機械組み立てが研究された。これら研究の中からPUMAなどのロボットの原型が作られた。それ以降、世界の研究機関でロボットによる組み立て研究がなされたが、実際の組立工場がロボット化されたという例は少い。

 PUMAの原型であるVicArmの設計者であるVicter Sheinmanが協同出資者となって1980年に設立したAutomation機器の製造販売会社がAutomatix社である。主要な製品はAutovisionというMachine Vision Systemとそれを組み込んだロボットシステム(例:視覚補正機能を持ったアーク溶接ロボット)などであった。Railというスクリプト言語を持っており、画像認識プログラムをユーザが書くことができた(注1)。Autovisionは当時の価格で1500万円もする高価な製品であった。

写真:Autovisionを使った部品組み付けロボット

 部品認識用のビジョンシステムはロボットを凌駕する大きな市場を創出するかと思われたが、極言すればリミットスイッチなどのセンサと同程度の役目しか果たせていないので、ロボットに比べても小さな市場規模しか形成できていない。Autovision程度の性能の製品ならば、現在では20万円以下で売られているのではないか。

 1982年頃までには、PUMAも改良されてだいぶスマートな外観になった。日本でも実際の製造ラインに導入され使われた。モータがブラッシ整流方式の直流モータであったので、定期的なメンテナンスが必要であった。また、角度センサはインクリメンタル方式のエンコーダであったので、起動時にゼロイングという原点復帰動作が不可欠であり使い難かった。(現在のロボットではエンコーダはアブソリュートエンコーダ、モータはブラッシレスDCサーボモータとなっている。)
 現在ではUnimation社は売却されPUMAの製造はWestinghouse社を経て1989年に
Staubli Robotics社(本社はスイス)に移っている。数多くのバリエーションを持つロボットに育っているようだ。

 United Technorogies社はフォーチュン500社にはいる大企業。軍用機器(航空機、宇宙機器)や建築用機器など広い商品分野を持つ。


 Bendix社はかっては自動車用ブレーキ、燃料噴射機器、レーダー機器、ミニコンピュータなどを作っていた会社。現在は?


 Westinghouse Electric Corp. 電気製品製造会社。原子炉の製造会社でもある。


 General Electric社は巨大な電機製造、サービス会社。Forbes Global 2000 によれば世界で2番目に大きな会社。


 Cincinnati Milacron社は工作機械メーカである。企業では初めて座標変換機能を持ったロボット(油圧駆動方式)を開発して、GMと共同でConsightという視覚によるコンベアトラッキングシステムを実現した会社であった。その後、電動型ロボットを開発し現在でも製造販売しているようだ


 IBMはコンピュータで生産システムを制御するビジネスをやっていた。ロボットも内製(直交型)、外部調達(スカラ型)して販売していた。6軸直交型ロボットは超音波センサフィードバックを利用して電気部品の組み立てに適用していた。


 1977年にPUMAが発表された後、米国の大企業を中心に、いろいろな企業が産業用ロボットの開発を進めた。1982年3月1~4日に米国のロボットシンポジウムROBOTS ⅥがデトロイトのCOBO HALLで開催され、同時に開催されたオートメーション機器展で米国製の産業用ロボットが数多く展示された。この展示会を見学したときに撮った主な写真をここに掲載する。これらのロボットを造った大企業は数年後にはほとんどがロボット製造・販売から撤退してしまった(注1)。撤退した原因は売れなかったことだろう。米国企業の機器開発に関する底力と変わり身の早さ感じる。
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 注1:2006年現在、米国の唯一の産業用ロボットメーカは Adept Tecnology Inc.と思われる。経営陣には1970年代にStanford大学で計算機制御アームによる機械組み立ての研究(PUMAロボットもこの研究をベースにしている)をしていたCarlisleやShimanoがいる。新技術の開発に意欲的で、技術力はトップクラス。近年では長期間の研究の後で、AnyFeederと呼ぶ「視覚支援型のパーツフィーダ」を製品化した。
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写真はCOBO HALL (Wikipedia,the free encyclopediaから借用)

 当時、デトロイト市はGMやFordなどの米国自動車が日本車におされて、不景気のどん底にあり、商店街なども荒れ果てていたことを覚えている(朝日新聞によれば2006年現在もデトロイト市は再びそのような状況になっているらしい)。
 デトロイト市は自動車産業に加えてロボット産業を振興させて、経済を立て直したいと思ったらしい。ROBOTS Ⅵなどを積極的に誘致していた。しかし、デトロイト市の思うようにはならなかった。PUMAのような高能力のロボットが出現しても、それをうまく使って利益を出すのは中々難しかった。つまり産業用ロボットビジネスはなかなか難しいビジネスだった。

 世界で最初に電動式のロボットを発売したのはスエーデンのASEA社(現在のABB社)であり、1973年のことだった。日本では1974年に安川電機が電動型のアーク溶接ロボットを開発した。ASEAロボットをお手本に、写真のアーク溶接用電動ロボット(5軸)Motoman L-10 を発売したのは1977年であった。

 当時は国産では数100ワットクラスの直流サーボモータやサーボドライバーは入手しがたく、NC工作機械も電気油圧パルスモータが主流であった。ファナックは一時期、高出力の電気パルスモータを電気油圧パルスモータに代わって商品化しようとしたが、騒音が大きく断念し、米国の直流サーボモータ技術を導入するなど、あわただしい変化が起こっていた。最初のMotomanは8ビットマイクロコンピュータで制御されており、座標変換機能などはまだ持っていなかった。

 1977年にGMの生産技術研究所(GMMD:General Motors Manufacturing Development)は自動車部品の組み立ての自動化に使うロボットの開発を公募した。その仕様はPUMA(Programmable Universal Machine for Assembly)としてまとめられていた。Unimation社はStanford大学計算機科学部研究員のVictor Sheinman(VicArm Incを作ってVicArmを研究用として販売していた)を雇って、Unimation West社で開発に当たらせ、Unimationの本社でGM向けに製造した。 
 PUMAの仕様とは、
 1)関節型のロボットである。
 2)人間の腕と等価(同じサイズ)である。
 3)人間との混在が可能である。
  (人間と触れても危険性が少ない低出力機を目指していたが、実際には最大可搬加重2.5Kgを持って最高速度1m/secで作業者に衝突すれば、作業者を殺傷するパワーを持っていた。この仕様は、達成されなかった。作業の高速化と衝突安全性は両立していない。ロボットは安全柵内部で運転されている。)
 4)段階的合理化が可能である。
 5)ロボット故障時は人間でバックアップできる。

注1:IRON AGE,Nov.28,1977. ONE BIG STEP FOR "ASSEMBLY IN THE SKY"

写真:Unimationから発売当初のPUMA(5軸型)(参照:ROBOTS IN INDUSTRY Vol.5,No.3 Fall 1978)、VicArmがその原型となっている。コントローラの上にアームが設置され、両者が一体化されている。ロボット故障時にコントローラも含めて交換される。交換された機械にプログラムとデータを入れ替えれば直ちに利用可能な状態になる「ロボットの互換性」が追及された。

図:PUMAの使われ方の概念図(GMの仕様)(参照:IronAge November 28,1977,One Big Step for "Assembly in the Sky")。ロボットアームとコントローラが一体化されている。


写真:Stanford大学コンピュータサイエンス学科のVictor Sheiman氏が人工知能研究用に設計した電動型ロボットアームVicArm。PUMAのベースになった。

 GMやFordなどの自動車メーカはスポット溶接や塗装作業の次のロボットの応用分野として、機械組み立て分野を考えていた。この分野のロボット化の困難さは後ほど思い知らされるわけだが、自動車製造工場の中での組み立て作業に従事する作業員の数は最も多く、ロボットによる自動化の効果は大きいように予想できた。また、多くの大学(例:Stanford大学)や研究機関(MIT,Chaies Stark Labs )でロボットによる機械部品組み立ての研究がなされていた。
 Unimation社(Unimateの製造会社)は、1979年代後半にFord Motorと共同でトルコンのサブアッセンブリーであるC-6ガバナー(部品数は12~15)の組み立て研究に取り組んだ。この研究で彼らは組み立てロボットに要求される最重要の性能は組み立て速度だという結論に達した。そこで、Unimation社はミニコンピュータで制御される6軸油圧サーボ型組み立て用ロボットを開発し、サーボのバンド幅は50Hzでツール端の加減速度は±2G,位置再現性は±0.1mmの高性能を実現した。私もこのロボットの実物をUnimation社で見たことがあるが、ロボットの後部がカバーされていて、動物の「アルマジロ」のような格好をしていたのが印象に残っている。

写真:機械組み立て用に開発されたUnimation 6000の2台が協調してC-5ガバナーを組み立てている。実際に商品化・販売されることは無かった。(参照:Machine and production engineering. 22.March 1978,Much to leran about robot)

 2台でC-5ガバナーを組み付けた結果は、組み立て所要時間が作業者の場合(一人)が46秒であるのに対し、31秒であった。このロボットは結局、実用化されなかったが、その理由はUnimation6000の価格が高すぎたためと思われる。作業者がガバナーを組み立てる場合の費用に対して、2台のUnimate6000がガバナーを組み立てる費用が高すぎ、また将来的に価格が下がらないとの判断があったのだろう。これ以降Unimation社は、ロボットの低価格化を目指して小型軽量の電動型ロボットの開発に方向転換する。

写真:Unimate6000の構造

GM製NC Painter

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 GMが1980年ごろに内製した7軸の油圧駆動型塗装専用ロボット。Digital Equipment PDP 11/34コンピュータ(16ビット演算)で数値制御されていた。手先にある塗装ガンに塗料を供給する配管がアームの中に組み込まれており、外部に露出しないすっきりとした構造が特徴的であった。
 塗装ガンが曲線軌跡上を滑らかに移動できる軌跡制御や教示をオフラインでする、いわゆるオフラインティーチングなどが採用されており、自動車メーカの理想を追求した先進的なロボットであった。GMが自ら生産用のロボットを製造したことは、NC Painterが最初で最後であったが、GMの産業用ロボット利用への熱心さは世界の生産技術者たちを刺激し、その後、産業用ロボット利用研究が世界的に大いに進展した。しかし、ロボットのような高度な機械を信頼性高く製造し、性能を維持することは困難を極めた。工場の生産設備としてのロボットに要求される信頼性のレベルは短期の開発期間で達成できるレベルのものではない。NC Painter以降、GMはロボット開発と製造を専門ロボットメーカに任せることになる。

写真:2台のNC Painterが塗装ブースの中で、コンベアラインの両側に配置されている。ロボットは車のボデーの移動に追従して移動しながら塗装作業をする。(参照:The Industrial Robot Dec. 1981,Assembly and machine loading will dominate General Motors robotics programme) 

写真:NC painterは6個の回転軸と1個の直線移動軸(コンベアへ追従)を持つ。

 産業用ロボットの開発でブレークスルーを作るために、いろいろなアプローチがなされてきた。それがはからずも安川電機とファナックという2大ロボットメーカのフラッグシップとして対立的に発表された。現時点ではどちらの進め方がよいかは判らない。それぞれ長所短所がある。
 双腕ロボットについていえば、長所は「一本のアームでは困難な難組み付け作業がやり易い」ということだろう。2本だけでなく3本以上のアームの協調動作ができれば可能となる組立作業も多いと思われる。一台のロボットが治具を使って組み立てる場合に比べて、治具を簡単化でき生産準備の時間を短縮できる可能性がある。一方、短所は単腕でできる作業も多いので効率が悪いという点がある。双腕型を作らなくても単碗のアームを2台使えば良いという批判もある。
 知能ロボットについては、その定義からはじめなくてはならない。ファナックの定義では「視覚または触覚センサを使って、作業対象の位置形状のばらつきに適応して作業を完遂できるロボット」のようだ。長所は作業の停止が起きにくいことだ。短所は作業速度が遅くなること。
 多腕知能ロボットがあれば、一番よいことになるが、コストが高すぎる。
 当面は作業の特徴にあわせて、これらのロボットを使い分けることになるのではないか。安川電機は双腕ロボットを作業の高速性が要求される自動車の組み付け作業に使おうとしているし、ファナックは知能ロボットを作業が比較的低速でよい部分(バリトリ作業、ワークの取り付け取り外しなど)で使っている。 
 技術的に難しいのは知能ロボットであろう。物体認識、接触の制御など20年以上にわたる長い研究の歴史があるにもかかわらず、いまだに実用例は少ない。ファナックが実用のラインで導入に成功したことは画期的というべきであろう。敬意を表したい。

 産業用ロボットの開発の方向についても、ファナックと安川電機は考えが異なるようだ(朝日新聞2005年12月9日)。安川電機はトヨタ自動車との共同研究で、双腕ロボットの開発を進めている。

双腕ロボット(安川電機2005年)
安川電機のサイト(http://www.yaskawa.co.jp/newsrelease/2005/15.htm)から引用

 両腕(各6軸)を装着する胴体に回転1軸を追加する(計13軸)ことで、両手協調による組立作業をやりやすくする。そのために、アームの関節の形態と配分を従来型の産業用ロボットの形態から変えた。手先の水平移動がやり易い構造になった。一方、ファナックは数年前までは双腕ロボットを従来型ロボットアーム2本で構成して機械組み立てをやらせていたが、「システムに柔軟性がなく、制約が多いことがわかって開発を卒業した」とのこと。

双腕ロボット(ファナック2000年)
力センサ、視覚センサなどで、対象物の状態を観察しながら、目的の仕事を完遂する。

http://www.fanuc.co.jp/ja/product/robot/pdf/intelligentrobot.pdfから引用)

視覚センサ(目)や力覚センサ(手)を駆使して、自律的に作業を完遂できる知能化ロボットの開発に重点をおいている。

知能ロボットの仕様(ファナック、産業用)
http://www.fanuc.co.jp/ja/product/robot/pdf/intelligentrobot.pdf から引用)
 

 日本の産業用ロボットメーカでロボット生産額の1位、2位は安川電機とファナックである。この2社のロボット開発でのスタンスは相当異なることが、2005年12月9日の朝日新聞に掲載されていた。大変興味深かった。安川電機はホームロボット(車輪型)の開発、販売をしているが、ファナックは参入の意図はないとのこと。「生産性向上を目的に贅肉をそぎ落とした産業用ロボットは、人間を相手にする際に重要なゆとりや情緒性と相容れない」というのがファナックの見解。

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